骨折の種類と応急処置
小さな振動や衝撃が加わらないようにしっかりと固定することが大切
野球の場面でよく見られる骨折には「突発的なアクシデントによるもの(外傷骨折)」「疲労が原因となって起こるもの(疲労骨折)」があります。
●突発的に大きな外力で起こる骨折(外傷骨折)
骨折とは、例えば打撲などの大きな外力が体に加わることによって、骨の連続性が断たれてしまう状態をいいます。骨の連続性が完全に立たれた状態を「完全骨折」と呼び、一部に連続性が残ったものを「不全骨折」として区別することがあります。皆さんが聞いたことのある「骨にヒビが入った」という状態は不完全骨折のことを指しますが、ヒビは骨折の一つであると理解しておきましょう。
完全骨折の中でも、骨折と同時に皮膚が破れて、骨が外からも見えるような状態にあるものを「開放骨折」と呼びます。骨が外気にさらされて雑菌による感染症のリスクが高まるため、すぐに医療機関を受診する必要があります。また指を突いたときなどに見られる骨折部が複雑に粉砕した状態を「粉砕骨折」と呼びます。以前は開放骨折のことを複雑骨折とも呼びましたが、骨が皮膚から見えている状態を開放骨折、複雑に粉砕した状態を粉砕骨折として区別し、複雑骨折という呼び方はしなくなりました。
●繰り返しの動作によって起こる骨折(疲労骨折)
一度の大きな外力によって骨が折れる外傷性骨折とは違って、長期間にわたって同じ部位に繰り返し外力が加わることでも、その負荷に耐えきれなくなって骨が折れてしまうことがあります。これを疲労骨折と呼びます。針金を繰り返し折り曲げていると、ある時ポキッと折れてしまう金属疲労に由来しています(体が疲れたという疲労の意味とは違います)。ランニングの負荷による脛や足の疲労骨折以外にも、野球ではスイング動作を繰り返すことによる肋骨の疲労骨折なども見られます。外傷骨折のような激しい痛みや腫れが見られることはまれですが、特に運動中や運動後、圧迫したときなどにジンジンとした鈍い痛みを伴います。
●外傷骨折が疑われるときの応急処置
外傷骨折が疑われる場合は基本のRICE処置にしたがって、患部を固定、氷などで冷却し、バンテージなどで軽く圧迫します。小さな振動や衝撃でも激しい痛みを伴うため、患部が動かないように固定することが重要です。副木(添え木)になるものをあてて、包帯や布などで固定するようにしましょう。受傷した部位にもよりますが、可能であれば二関節をまたいで固定すると安定します(前腕の骨折が疑われる場合は手関節から肘関節までを固定する)。指の損傷は受傷していない隣の指とあわせて固定することもあります。応急処置後はすみやかに医師の診察を受けるようにしましょう。骨折している場合、骨の位置が変わらなければそのまま固定しますが、ずれている場合は整復(元の正常な位置に戻すこと)が必要となります。
骨折から競技復帰までかかる時間は、損傷の部位や受傷程度、固定期間などによって大きく変わります。ただしケガをした際の初期対応がその後の競技復帰を大きく左右しますので、迅速な対応を心がけましょう。
文:西村 典子
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