靱帯の特性とその役割
靱帯は多少の弾性力があるものの、大きなストレスを加えると伸びてしまう
激しい動作を伴うスポーツは骨や筋肉、腱、靱帯など運動器を中心にケガをしてしまうことがあります。野球では投球動作の繰り返しによって肩や肘を傷めてしまったり、とっさの動作に対応できずに足関節や膝関節などを捻挫してしまったりといったことが起こります。特に靱帯を傷めると「競技復帰までに時間がかかる」と思われがちですが、靱帯は体の中でどのような役割を担っているのでしょうか。
●靱帯は骨と骨をつなぐ
靱帯は骨と骨とを結びつける接着剤のような役割を持ち、コラーゲン(繊維状のたんぱく質)を主成分とする結合組織です。骨格を正しい位置に保ち、骨と骨の間に関節を形成して関節可動域(関節の動く範囲)を制限する働きがあります。肘や足首などが変な方向に曲がらないようになっているのは靱帯によって制限がかかっているからであり、大きな外力によって脱臼したり、骨折したりすると、関節を構成する靱帯も一緒に損傷してしまうことがあります。野球のグローブはさまざまなパーツの革を組み合わせて革ひもで形を整えますが、この革ひもが靱帯の役割にあたります。
●捻挫と靱帯損傷
捻挫とは捻る(ひねる)、挫く(くじく)といった動作そのものを表します。どの組織が損傷したかということではなく、捻ったり挫いたりした時はすべて捻挫として扱われます。捻挫によって関節に大きな負荷がかかってしまうと、関節を構成する靱帯は引っ張られてその一部が断裂したり、ひどい場合であれば完全断裂したりしてしまいます。
例えば足首の内反(ないはん)捻挫は足を内側にひねったことによって、足首の外側にある前距腓(ぜんきょひ)靭帯などが関節の動きを制御できず、引っ張られて断裂したり、損傷したりした状態になります。また投球動作の繰り返しによる肘の痛みは、投球動作のたびに肘が外側に反り返ることを強制され、結果的に肘の内側にある内側側副靱帯が損傷してしまったという状態です。
●靱帯は伸びたら元に戻らない?
筋肉ほどではありませんが靭帯にも若干の弾性力(伸び縮みする力)があり、張力(引っ張る力)がかかり続けると次第にその弾性力を失っていきます。脱臼や骨折した場合にできるだけ早期に整復する必要があるのは、靱帯が伸びすぎてしまうことを防ぐ目的もあります。初期対応が遅れてしまうと靱帯には過度な張力がかかって弾性力が低下し(いわゆる靱帯が「ゆるんだ」状態)、関節を保持する強度が落ちて、習慣的な脱臼の原因ともなってしまうからです。
このような靱帯の特性から、靱帯を損傷した場合は患部を固定をして組織の修復を待つ必要があります。靱帯の損傷程度や部位によっても固定期間は変わりますが、靱帯の完全断裂後、体重のかからない非荷重関節で最低3~4週間程度、体重のかかる荷重関節で最低6~8週間程度を目安として固定を行います。また靱帯の強度が低下し、関節動揺性(グラグラ感)が大きい場合には手術によって靭帯を縫合、再建することが確実であるといわれています。
文:西村 典子
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