手をついて起こるケガ
手首のケガは放置しておくと長引きやすい。適切な対応をとるようにしよう
野球のプレーではランナーとして帰塁を試みたときや、打席の中で近くにくるボールをよけようとしてバランスを崩したときなどに、思わず手をついて手首を痛めてしまうことがあります。アクシデント等によって起こる突発的なケガ(急性のスポーツ傷害)の場合、応急手当として患部を安静に保って氷などで冷やす(アイシング)ことが一般的ですが、腫れがひどかったり、痛みが数日経ってもおさまらなかったりするような場合は、すみやかに医療機関を受診することが大切です。手をついて起こるケガをここでは3つ挙げてみます。
●手関節捻挫
手関節に大きな外力(荷重)がかかってしまい、関節を安定させるための靱帯や、筋肉と骨をつなぐ腱に炎症がみられるようなケースです。もともと捻挫とは「捻る(ひねる)」「挫く(くじく)」という動きを表現したもので、このような動作を伴うものはすべて捻挫であり、捻挫をしたことによって「何を」「どの程度」傷めたのかによってその後の対応も変わります。手関節捻挫といわれる場合、その大半は靱帯や腱の損傷を表しますが、最終的には医療機関で画像による診断を受けて確認する必要があります。
●TFCC損傷
手をついたことによって小指側にある軟骨を傷めてしまうことがあります。野球に多いスポーツ傷害の一つである三角線維軟骨(TFCC)損傷です。痛みが長く続いてしまうことも少なくなく、安静にした状態でしばらく過ごしていても、手首を使うような動作(特に小指側に手を傾ける尺屈)を行うと強い痛みが再発してしまいます。手の甲の小指側に痛みが出やすいですが、手のひら側の小指側(小指球付近)に痛みを感じることもあります。
●舟状骨(しゅうじょうこつ)骨折
転んだ姿勢などによっては手首を構成する手根骨(しゅこんこつ)に大きなストレスがかかり、手根骨を骨折してしまうこともあります。代表的な一例として親指の根元にある舟状骨骨折が挙げられます。親指の根元付近を中心に痛みが続く場合は、早めに医療機関を受診して骨折をしていないかを確認してもらいましょう。適切な対応をせずにそのままにしておくと、手関節の痛みだけではなく、筋力低下などもみられるようになります。
手首のケガが回復しにくい一因に血流の乏しさがあります。手首は体の末端に位置するため、血流が乏しく、傷んだ組織が修復するために必要な酸素や栄養素などが十分に届きにくいことが挙げられます。また手首は日常的にもよく使う部位であり、患部を安静に保つことがむずかしい一面もあります。基本的な応急手当はもちろんのこと、医師の診察を受けた上で適切な対応をとることが大切です。
文:西村 典子
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