呼吸で緊張をコントロールしよう
緊張を落ち着かせるため、深く大きく息を吐いてみよう
選手の皆さんは試合を始め、さまざまな場面で緊張した経験があると思います。適度な緊張はパフォーマンスによい影響を及ぼしますが、緊張しすぎるとかえって動作がぎこちなくなったり、反応が遅れたりしてプレーに支障を及ぼすことも考えられます。一方で、まったく緊張しない方がいいかというとそうでもなく、緊張感のない状況でのプレーもまた思わぬところでミスをしてしまったり、集中力が欠けて判断が遅れたりといったことが起こります。
●交感神経と副交感神経の働き
私たちの体は自分の意志とは関係なく呼吸器(肺や心臓など)や消化器(胃や腸など)といったさまざまな臓器を動かし続けますが、これをコントロールしているのが自律神経です。自律神経には体をより活発にさせるために働く交感神経と、体を休めてストレスを和らげることに働く副交感神経の2つがあり、この2つの指令を調整することで生命を維持することができます。自律神経は自分でコントロールすることがむずかしいものですが、意識的に呼吸をかえることによって自律神経に働きかけ、緊張を和らげたり、意識的に気分を高揚させたりすることが見込めます。
●緊張した状態を落ち着かせるには「大きく息を吐く」
試合前に緊張してしまうときには交感神経が優位に働いています。肩に力が入っているとき、気持ちがあせってしまうときなどは、できればもう少し心に余裕を持って試合に臨みたいですよね。「緊張してるな」と感じる時はゆっくりと、大きく息を吐くことを繰り返しましょう。副交感神経が働いて心拍数が落ち着き、重心が下がって緊張がやわらぎます。100円ショップなどで売っている風船を準備しておき、試合前にふくらますといったエクササイズなどもオススメです(思いのほか風船をふくらませるのがむずかしいかもしれません)。これは風船をふくらまそうと息を吐くことで副交感神経に働きかけ、緊張がほぐれることをねらったものです。
●試合に集中したいときは「短い呼吸を繰り返す」
一方で試合前なのに「どうも試合に集中しにくい」といったときは、短い呼吸を繰り返して交感神経を刺激するようにしてみましょう。短い呼吸によって心拍数が上がり、闘争ホルモンの一つであるアドレナリンが分泌されて、より試合に対する意欲が高まり、適度な緊張をもたらすことが期待できます。試合や本番のときは、緊張しすぎても、緊張がなさ過ぎても本来のパフォーマンスを発揮することがむずかしくなりますが、呼吸によって自律神経に働きかけることができることを覚えておくと、いざという時に役立ちます。
文:西村 典子
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