体の安定性と野球に必要なバランス
重心の位置が低く、支持基底面が広いと体は安定する
野球における「バランスがいい」とはどのような状態を言うのでしょうか。スポーツにおいては静止した状態でのバランス能力だけではなく、動いている状態の時にも自分の体をコントロールしながらパフォーマンスを発揮できる能力が求められます。これを体を安定させるための3要素と関連させながら考えてみましょう。
1)重心の位置
重心の位置が低くなればなるほど、安定性は高まります。守備の姿勢を考えてみると、腰高では重心位置が高くなるために、体が不安定になりやすいことが考えられます。重心位置を低く保つためには、股関節が十分に機能し、膝関節や足関節とともに連動しながらしゃがみ込める状態をつくり出すことが大切です。体の重心はだいたいおへその下あたりにあると言われていますが、腰高を改善しようとして股関節主動ではなく目線を下げるような動作が伴うと、背骨から丸まってしまって頭が前方へと突っ込んだ姿勢となり、腰痛を引き起こしやすい姿勢となってしまいます。
2)支持基底面の広さ
体重を支えるために必要な床面積の事を支持基底面 (しじきていめん)と言います。支持基底面は足裏の接地面積だけではなく、足を広げるほど支持基底面は広がります。片足よりも両足の方が支持基底面は広く安定しますし、両足を揃えて立つよりも両足を開いた方がより安定するのは体感として理解できると思います。
一方、野球は投球動作やバッティング動作など、体の重心を移動(体重移動)させながら下肢から上肢、バットやボールへと力を伝達させてパフォーマンスを発揮します。両足で低い姿勢を保つ場面はありますが、基本的には軸足から踏み込み足へと重心を移動させるため、片足で体重を支えられるだけの筋力や筋持久力、バランスなどが求められます。
3)体の重さ
これは単純に体重が多いほど安定しやすいということになります。例えば軽いものだと風などで飛ばされてしまいますが、重いものだとその場にとどまる可能性が高く安定します。野球の動作では止まった状態から動いたり、動いた状態から急に減速したりといった動きをコントロールする能力が必要であり、体重を自在に操れるだけの筋力が備わっている必要があります。オフシーズンに体を大きくすることはパフォーマンスアップが見込めますが、体脂肪が多く筋肉量が少ない状態(筋力が不十分)では荷重関節(かじゅうかんせつ:体重がかかる関節)などに過度な負担がかかってケガをしやすくなることも覚えておきましょう。
野球に必要なバランス能力は動きの中で自分の体をコントロールできる能力とも言えるでしょう。体が安定する3要素を理解し、その中で自分に必要な体力要素もあわせて強化するようにしてみてくださいね。
文:西村 典子
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