私たちの体は大小含めて600以上の筋肉が存在すると言われています。その筋肉は私たちの体を何層にも重なるようにして付着しており、皮膚の表層近くにあるものを便宜上、表層筋(アウターマッスル)、体の深部付近にあるものを深層筋(インナーマッスル)と表現することがあります。肩関節付近にある筋肉も表層から深層にかけていくつもの筋肉が関節運動に関与しています。投球動作を繰り返すとき、肩関節には大きな遠心力(上腕骨が肩甲骨から離れようとする力、牽引する力)が働きますが、そこで上腕骨が体から離れていかないようにつなぎ止める役割をしているのが肩関節の深層部に付着するローテーターカフ(日本語では腱板、いわゆるインナーマッスル)です。

 ローテーターカフは肩関節付近に付着し、関節そのものの安定性を高める役割があります。構成している筋肉は肩甲骨の上方にある棘上筋(きょくじょうきん)、肩甲骨の後面にある棘下筋(きょっかきん)と小円筋(しょうえんきん)、肩甲骨の前面ある肩甲下筋(けんこうかきん)の4つです。また上腕二頭筋の長頭部(二つに分かれた長い方の筋肉)もまた肩関節付近の安定性に関わるため、腱板筋群の中に含まれることもあります。

 これらの筋肉を強化していくためには、チューブやダンベルなどを使ったエクササイズが一般的です(参考コラム:正しくインナーマッスルを鍛える)。設定する重さは軽い負荷のものから始めていきますが、ローテーターカフの機能が低下している場合は自重(腕の重さのみ)でのエクササイズを選択するケースもあります。

 これらの筋肉はそれぞれ小さく、筋力としても大きなパワーを期待できるものではありませんが、うまく働かないと肩関節の安定性が損なわれてケガをする要因となります。肩関節への求心力が低下すると、投球動作の繰り返しによって肩のゆるみや抜けるような不安感を覚えるルーズショルダーを引き起こしたり、「野球肩」と呼ばれるような腱板の筋肉そのものを傷めてしまったりして、投球動作のたびに痛みがあるといったことも起こります。

 ローテーターカフも他の筋肉と同じくトレーニングをすることで強化することが可能です。その際にはアウターマッスルに頼らないように負荷を調節しながら、段階的に強度を上げていくようにしましょう。ローテーターカフは深層部に位置するため、それぞれを切り離して強化することはむずかしい側面もありますが、なるべくそれぞれの筋肉に対して個別にアプローチしていくことも大切です。

文:西村 典子
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