ランニングはどのタイミングで行うか
大きなパワーを要するダッシュは練習のどのタイミングで行うかを考えてみよう
長いオフシーズンが終わりに近づくと、今まで行ってきた体力トレーニングを野球の技術に活かす移行期にあると言えるでしょう。もちろん技術練習と体力トレーニングはどちらか一方だけを行うものではなく、適切な時期に適切な割合でそれぞれに注力していくことになると思います。シーズンに向けて実践練習を行い、対外試合などが始まると技術練習にかける時間が長くなりがちです。その一方で全体練習の中に組み込まれることの多いランニングはどのように実践していけば良いでしょうか。
●シーズン前のランニングはパワー養成期
ウエイトトレーニングをはじめとする体力強化のピラミッドは、土台として筋肉量の増加(筋肥大期)、最大筋力の向上、パワー養成期と下から積み上げていくように計画立てていきます。これと同じようにランニングについても最終的には野球に活かせるパワーが必要となってくるため、心肺持久力、筋持久力を意識した中長距離のランニングから、次第に距離は短く、スピードを求められるものへと変化していきます。もちろん毎日同じ内容ではなく、運動の強弱をつけたり、距離に変化をもたらすことはフィジカルコーチのプログラムデザイン(どのメニューを、どのくらい、どのように実施するか等)によって左右されます。このときチーム全体、選手の疲労具合、天候(特に寒い時期は気温や風の影響)などによって臨機応変に対応することが望ましいといえるでしょう。
●練習後にランニングを行うとき
多くのチームでは技術練習が一通り終わった後にランニングを実施することが多いと思いますが、このときに体力レベル以上の運動量をこなしているときは注意が必要です。全体練習で持てる力を発揮できるだけの体力も必要ですが、疲労困憊の状態でさらに体に負荷をかけるランニングを長時間にわたって行うと、疲労が蓄積されてケガのリスクが高まることも懸念されます。ランニングをクールダウンの一環として行う場合はさほど問題にはなりませんが、体力維持・向上、さらにはパワー養成を目的とする場合は選手の体力にある程度余力を残した状態で実施するようにしましょう。
●ウォームアップにランニング要素を組み込む
短いダッシュなど大きなパワーが必要となるランニングは、ウォームアップの終盤にランニングプログラムの一つとして実施することも一つの方法です。体がある程度温まった状態で行うため、ケガのリスクを軽減することができ、かつ体力的にフレッシュな状態で行うことが可能です。メイン練習の前にどのぐらいの運動負荷をかけるかは練習計画に沿って行うことになりますが、シーズン前に行うダッシュ系のランニングは全体練習後の疲労した状態よりも練習前の状態で行う方がより効果的であると言えるでしょう。ただし練習時間は限られていることが多いため、強化したい内容を中心に曜日ごとに変化をもたせる等、練習計画を柔軟に考えることが大切です。
文:西村 典子
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