すり傷と蜂窩織炎(ほうかしきえん)
スライディングでのすり傷はよく見られるものだが、その後は傷口を清潔に保とう
皆さんは蜂窩織炎(ほうかしきえん)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。蜂窩織炎とは皮膚とその下にある皮下脂肪に細菌が入り込んで、感染し、炎症などが起こる皮膚感染症の一つです。スポーツの場面では接触によって皮膚を傷めてしまった場合、その傷口や毛穴などから細菌が侵入することによって起こりやすく、スライディングなどで膝をすりむいた後の傷から蜂窩織炎になるケースもあります。また深爪をした部分から細菌に感染することもあります。素足で競技をする柔道選手や相撲力士などによく見られます。
蜂窩織炎を予防するためには、すり傷を負った後の対応にも配慮が必要です。スポーツ選手にとって、すり傷はさほど大きなケガにはなりにくいため、ついついそのまま放置してしまいがちですが、ケガをした部分は流水でよく流し、必要に応じてガーゼなどの保護材を使用して清潔に保つことを心がけましょう。
以前スライディングをした膝の部分から細菌が入って蜂窩織炎になったケースを見たことがあります。はじめは虫刺されかと勘違いするほど小さな腫れですが、触ってみるとちょっと熱いかなという熱感がありました(炎症症状)。そのまましばらくすると今度は膝より上の太もも部分にまで腫れが及び、股関節の付け根にあるリンパ節の腫れも見られるようになりました。さらに進行すると体全体の倦怠感なども現れることがありますので、腫れが拡がり、患部に熱感があったり、発熱が見られたりするようであれば、すみやかに医療機関を受診するようにしましょう。
軽度であれば抗菌薬などを用いることで、症状は軽快することが多いのですが、程度がひどい場合は医療機関で点滴を行うこともあります。中には入院を余儀なくされるほど悪化する場合もあります。すり傷や深爪、巻き爪などは比較的よく見られるものであり、普段はあまり気にしないことも多いと思いますが、小さな傷口や毛穴、抵抗力が下がっている場合は明らかな傷がない状態でも蜂窩織炎を起こすことがありますので、汗をかいたままの状態や清潔ではない状態で長くとどまらないようにすることも大切です。
文:西村 典子
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