競技復帰をあせらない
段階的にトレーニングの強度を上げながらあせらずに競技復帰を目指そう
野球をしているとどうしてもケガをしてしまうことがあります。急性外傷(アクシデント的なケガ)だけではなく繰り返し動作による慢性的なスポーツ障害(いわゆる野球肘、野球肩など)によって、全体練習に参加できないという選手もいると思います。
ケガをすると今までできていた練習ができなくなり、気持ちも落ち込んだり、早くプレーがしたくて焦ったりすることがあると思いますが、競技復帰に向けては段階的にできることを増やしていくことが大切です。まずはケガをした時に受診した医師の指示に従い、ケガをしていない部位を中心とした患部外トレーニングを行うようにしましょう。ケガをしてしまうと全体的な運動量が減ってしまうため、ケガをした部位以外のところも体力レベルが落ちてしまう可能性があるからです。
ケガの部位に関しては患部の炎症コントロール(腫れや痛みなど)をまず優先し、RICEに代表される基本的な応急手当(患部の安静、アイシング、軽い圧迫、挙上)を行うようにします。炎症症状が改善されてきたら今度は関節可動域を回復させるようによく動かしていきます。足首の捻挫などであれば、足関節が動きにくくなっているところを動きやすくするといったことです。関節の動く範囲がケガ以前の状態に改善したところで今度は筋力強化を目的としてトレーニングを行います。この時は左右差を確認し、ケガをしていない反対側の筋力を目安としながら左右差をなるべく小さくするようにしていきます(左右の周径囲を計測し、筋力の指標とすることもできる)。
関節可動域、筋力がケガ以前の状態に近づいたところでプレーで想定されるような動きを取り入れたエクササイズや練習を行っていくようにします。足首の捻挫であれば左右の動きや前後の動き、急激なストップやターン動作ができるようなものや実際のランニング、投球障害であれば段階的にキャッチボールの強度を増やすといったことです。最終的にはケガに対する不安を感じない状態にまでコンディションを整えることが大切です。このように少しずつ負荷を加えながら競技復帰に向けて準備していくことが大切ですが、早期に復帰しようとして痛みが残った状態や、不安感がぬぐえないままプレーをすると再発のリスクだけではなく、ケガをしていない反対側に過度な負担がかかってケガをしてしまう…といったことが考えられます。自分のコンディションが今どの段階にあるのかを把握し、医師と相談しながらあせらずに競技復帰を目指すようにしましょう。
文:西村 典子
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