体を大きくして力をつけたいと考えるとき、取り組む優先順位として高くなるものが下半身を中心としたトレーニングです。野球は肩や肘など上半身の巧みな動きも必要ですが、それを支えるのが下半身の筋力となるからです。野球の投球動作はプレートからホーム方向に移動する水平運動と、軸足の股関節を起点として体をひねり、腕を振る動作をサポートする回転運動があります。どちらの運動もまずは下半身から動き出し、その上に体幹や上半身がついてくることで実現します。大きな力を発揮する場合は下半身の筋力強化が不可欠であると言えるでしょう。

●大きな力を発揮する源となる下半身
 下半身の強化としてまず思いつくのがスクワットではないでしょうか。臀部(お尻周り)や大腿部をはじめ、下半身の筋力向上に役立つエクササイズです。この他にも前後や左右のランジ動作なども必要に応じて取り入れるようにしましょう。下半身が安定してくると、その上にある体幹や上半身のぐらつきも抑えられることが期待できます。ピッチャーであれば足を挙げて、踏み込んだときに土台が安定するため、そこから水平運動と回転運動を使って力を上半身へと伝達し、ボールを投げることができます。

 下半身強化のためにいわゆる「走りこみ」を行うこともありますが、筋力強化という点を考慮すると長い距離をゆっくり走るのではなく、短い距離で大きなパワーを生み出すダッシュの方が理にかなっています。ロング走を行うのは筋力強化ではなく、筋持久力や心肺持久力(スタミナ)を強化するものと理解しておきましょう。

●上半身のトレーニングは動きを妨げないことを意識しよう
 体幹や上半身のトレーニングも行う必要がありますが、気をつけたいのは筋肉がつきすぎることによって動きに支障が出る場合があることです。極端な例ですが、肩を強くしたいと肩周辺部の筋肉ばかりを鍛えた結果、肩が筋肉(三角筋)で盛り上がり、スムーズなスローイング動作ができなくなった選手がいました。この他にも腕の筋肉をつけたいと上腕二頭筋を中心にアームカールなどを行っていると、腕そのものが筋肉によって重くなります。片腕の重さは体重の6%程度とも言われ、体重60kgの選手では約3.6kgに相当します(個人差があります)。この重さを毎回振ってボールを投げているところに、さらに重量が増してしまうとどうでしょうか。投球数が増えるにつれて腕が上がりにくくなったり、肩への負担が増大したりといったことが考えられます。この腕の重さに負けないだけの背筋や上腕三頭筋などブレーキをかける筋肉が発達していないと、ケガのリスクが増大することになります。このように上半身のトレーニングは野球で行う動きを妨げないようにしながら行うことが大切です。

文:西村 典子
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