敏捷性(アジリティ)を鍛える
相手の動きを見て瞬時に同じ動作を行うミラードリル
野球のプレーにおいて「走る」動作は常に求められます。ただし打った後に一塁まで全力で駆け抜けるといった「全力で走りきる」こと以外にも、何かに反応して切り返したり、加速や減速を繰り返したりといった体の使い方が必要です。こうした体力要素を支えるのが「敏捷性=アジリティ」と呼ばれるものです。アジリティとは動作の素早さや体を自在にコントロールする能力のことを指し、これらを向上させるためのトレーニングがアジリティトレーニングです。アジリティトレーニングと聞くとラダーやミニハードル、コーンなどの用具が必要になると思われがちですが、工夫次第では用具なしでもアジリティトレーニングを行うことはできます。
●ウォームアップにアジリティを意識したエクササイズを加えよう
特別な用具を準備しなくても、ウォームアップの中にアジリティを意識したエクササイズを加えることは可能です。合図にあわせて左右のジグザグ走を行ったり、ストップ&ゴーといって加速しているところで急にストップをかけ、またそこから再度加速するような動きを行ったりすることでもアジリティは鍛えられます。急激な減速や加速は膝や足首に負担がかかりやすいので、ケガの既往がある選手は出来る範囲で行うようにしましょう。左右の動きは指示する人が左手を挙げる、開くといった合図で左方向に向かうことの他にも、左手を挙げると右方向に向かうといった反対の動きも行ってみましょう。目から見た情報を脳で認識し、体に指令を出すまでの一連の神経回路を刺激することができます。意外とひっかかりやすく、反応を高めるドリルとしても用いることができます。
●ペアで行うミラードリル
この他にも選手同士がペアになって行うミラードリルがあります。これは文字どおり鏡のように動くというもので、お互い向き合って一人が「動く人」、もう一人がその動きを「マネをする人」に分かれます。スタートの合図で動く人は左右に動いたり、ジャンプをしたりと自由に動きます。マネをする人は相手の動きを見て瞬時に同じ方向に動いたり、同じ動作を行ったりします。前後の動きでは動く人が前進したらマネをする人は後退し、動く人が後退したらマネをする人は前進するというように、お互いの距離を一定に保つルールにするとぶつからなくて良いと思います。また人数が奇数になってしまったときは2対1で行うこともできます。30秒も続けるとかなり体を動かして息が上がるので、ウォームアップの1つとして取り入れることも良いでしょう。ぜひ参考にしてみてくださいね。
文:西村 典子
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