皆さんは「パワーをつける」と聞くとどのようなトレーニングを思い浮かべますか? 一般的なウエイトトレーニングであったり、例えばタイヤを押すようなフィジカルトレーニングであったり、メディシンボールを遠くに投げるようなエクササイズであったりするのではないかなと思います。まずはパワーが表すものについてしっかり理解しておきましょう。物理(理科)の授業でも習ったと思いますが、

パワー=「力」×「スピード」

です。力にスピードを掛けあわせたものがパワーです。ですからウエイトトレーニングなどで重い負荷を挙げられたとしても、スピードが伴わないとパワーは向上しませんし、軽い負荷でスピードを重視したトレーニングを行っていてもある一定のパワーに到達するとそこから頭打ちになってしまいがちです(負荷が軽い状態のままだから)。

専門的なトレーニング指導者はこのことをよく知っているので、パワーを最大限に引き出すためには段階的にトレーニングプログラムを変更しています。最初から「最大筋力」と「最大スピード」を追い求めてしまうと、フォームを崩してケガのリスクが高まったり、そもそもどちらも中途半端になってしまったりするからです。一般的なトレーニングプログラムの計画としては、

1)最大筋力を高めるための土台作りとして筋肥大を目的としたもの(体を大きくする)
2)体の土台をつくりつつ最大筋力が発揮できるように筋肉を強化すること
3)最大筋力が発揮できる状態から、そこにスピードを加えること(パワー養成)

となります。試合期になるとウエイトトレーニングの負荷を下げて調節することもありますが、試合直前まではパワーをつけるためのトレーニングを続けることになります。これは「重いものを素早く挙げる」ことを意識したものです。

選手によっては「得意」「不得意」もあると思います。重いものを挙上することができても、出力のスピードがイマイチ改善しないという選手であれば、負荷を固定して挙上スピードをストップウォッチなどで計測し、そのスピードが改善されるようにトレーニングしていくことも一つの方法です。逆に出力のスピードはあるけど重いものを挙げることがむずかしいという選手であれば、スピードを基準にしながら負荷を段階的に挙げていくようにプログラムを個別にすることもよいと思います。メディシンボール投げのスピードを意識しながら段階的に負荷を挙げていき、そのスピードを維持するようにするといった具合です。

パワーをつけるためには「力」だけでも「スピード」だけでも不足してしまいます。それぞれの体力要素をしっかり伸ばしながらインパクトの瞬間に大きなパワーを発揮できるようにしていきましょう。

文:西村 典子
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