落雷事故を防ぐために
夏は急に天候が急変しやすいで、あらかじめ落雷に備えておこう
暑い時期になると天候の急変による落雷がたびたび起こるようになります。特に午後から夕方にかけては一層注意が必要です。落雷そのものは自然現象によるものなので、防ぐことはむずかしいですが、落雷による事故は防ぐことが可能です。頻度は少なくても落雷事故によって命を落とすこともあるため、落雷事故に遭遇しないために知っておきたい基礎知識や、気をつけておきたいこと、心構えなどを確認しましょう。
●なぜ暑い時期に落雷は多くなる?
天候の急変をもたらす積乱雲は特に暑い時期に多く発生します。積乱雲は強い日射しによって地表が温められて空気が上昇し、上空の冷たい空気との対流が起こることで発生します。これは温かい空気に含まれる水蒸気が上空では冷やされて「あられ」となり、これらが上空でぶつかりあって静電気が発生します。そしてたまった静電気が地上に向かって一気に放たれるものが落雷です。落雷は気温が上昇ピークを迎える昼過ぎから夕方ごろに多く発生します。
●音と光の速度差に惑わされない
空がピカッと光ったとき、音との時間差によって「雷が近くに落ちた」「まだ遠そうだ」と判断することも多いと思います。光と音の速度差は光が約30万km/秒、音は約340m/秒と圧倒的に光の速度が上回るのですが、だからといって「まだ遠い(音が遅い)から大丈夫」というのは間違いです。雷雲は連なって出来ていることもあり「音が遠いのに、雷雲は自分の真上にもかかっていた」というケースも想定されます。また雷は真下だけではなく、斜めに落ちることもあるので、上空が晴れていても落ちる可能性があります。「雨が降っていなくても雷が落ちるかもしれない」という意識を持ちましょう。
●積乱雲が近づく兆候を知っておこう
積乱雲が近づく兆候としては「急に暗くなる」「短時間で厚い雲で覆われた空になる」「ヒヤッとした冷たい風が吹く」「大粒の雨やひょうが降る」ことなどが挙げられます。このような兆候が見られたら、バットなど長い道具はすぐに手放し、避難しましょう。
●安全な避難場所を確保しよう
落雷に対する安全な避難場所としては、四方を囲まれた建物や車の中などです。グランドやベンチなどは囲まれた建物ではないので避難場所には不向きです。また木の付近に近寄ることも非常に危険なのですみやかに移動します。木の近くにいると側撃雷(近くのものに落雷し、その衝撃を受ける)に遭遇することがあるためです。雷鳴が聞こえなくなっても、すぐに練習を再開してはいけません。気象情報が得られない場合「雷鳴後30分たっても次の雷鳴が聞こえない」ことが行動の目安とされています。
●もしも落雷事故に遭遇したら
万が一落雷事故に遭遇したときは、すぐに救急車を要請し、雷を受けた人を安全な場所に移動させて心肺蘇生法(AEDを含む)を実施します。倒れた人を触っても雷の電気は放電されているため、救助者が感電することはありません。迅速な応急処置が人命救助につながります。落雷に対する正しい知識と万が一遭遇した時の対応について、しっかりと理解しておきましょう。
文:西村 典子
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