野球の試合を見ていると、バッターが打ってから一塁ベースを目指して走っている中で、きわどいタイミングになるほど一塁ベースに向けて勢いよくヘッドスライディングを行うシーンをよく見かけます。ランナーとして何としても塁に出たいという「執念」や「気合い」の表れであったり、ファーストの捕球とランナーのベースタッチのタイミングがわかりづらくなるため、審判へのアピールをしやすかったりといったことが考えられますが、固定ベースへ手からスライディングすることは、大きなケガにつながりやすいものであることを理解しておく必要があります。

 塁上のランナーとして帰塁するときも手から戻ることが多いと思いますが、セーフティーリードの際はベースと自分の位置をしっかり把握しているため、帰塁のスピードや滑り込むタイミングなどをうまく調整して行うことになります。ただし逆をつかれてしまった場合は距離が微妙に変わってくることや、アウトにならないように焦って戻るため、スピードのコントロールがうまくいかずにケガをしてしまうケースが見られます。

 もともとスライディングの技術は塁上でのタッチをかいくぐる際に効果的な技術であり、一塁への駆け抜けについてはタッチプレーを必要としないため、トップスピードで走り抜ける方が早いといわれています(これには諸説あり、駆け抜けることとスライディングを試みることとであまり差は見られないという意見もあります)。ヘッドスライディングは体全体で滑り込むため、グランドとの摩擦を生むことでのタイムロスが考えられる上に、固定ベースに頭からスライディングを試みると、相手の野手にスパイクで手を踏まれたり、突き指や指の骨折をしたりするだけではなく、ベースに手をついた際の衝撃で肩の脱臼を起こしたり、頸部や頭部へのケガをしたりとさまざまなケガのリスクが想定されます。

 肩関節の脱臼は手をベースについた際に起こることがありますが、このとき肩関節脱臼を起こしやすい腕の位置になっていることがその要因として挙げられます。腕を横に90度挙げ、その位置で肘を90度曲げて手を上に挙げた状態(肩関節外旋・外転90度)では、肩の後方から衝撃を受けると、上腕の骨が肩関節から外れて容易に前方へと移動(脱臼)してしまう構造になっています。ヘッドスライディングやランナーの帰塁時などはこうした腕の位置になりやすいため、肩関節脱臼のリスクが高いプレーと言えるでしょう。

 さらに頭からベースに突っ込むことで頭部や頸部へ大きな衝撃が加わり、野手と交錯することによって脊柱損傷など重篤なケガにつながる危険性も高く、このようなリスクを考えるとヘッドスライディングはケガを誘発しやすいプレーの一つであると言えると思います。アピールプレーも大事ですが、それ以上にケガをしないことが大事です。不用意なヘッドスライディングはなるべく避けるようにしましょう。

文:西村 典子
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