緊急性の高い3つのアクシデント?
生命に関わる「3H」を理解し、救急対応への備えをしておこう
運動中におきるアクシデントのうち、生死に関わるとされているのが、Heart=心臓、Head=頭部(首も含めて頭頸部)、Heat=熱の3要素です。これは頭文字をとって「3H」と呼ばれています。Heartでは心臓疾患の突然死が一番多く、頭部では外傷による脳内出血や頭蓋骨の骨折、熱は熱中症のことを指します。これら3つのアクシデントに遭遇したときは救急車の要請や迅速な救急対応などを行います。
●Heart=心臓震盪(しんとう)など
野球ではプレー中にボールが体にあたってしまうことがありますが、成長期の選手は特に胸部付近への強い衝撃が加わると、心臓が突然停止してしまうことがあります。これを心臓震盪(しんとう)といいます。特に守備中にライナー性の打球やイレギュラーバウンドが胸部付近にあたるケースなどが考えられます。心臓震盪は「場所」「強さ」「タイミング」の3条件がそろうと発生するといわれ、特に成長期の選手は肋骨などの骨格が十分に発達していないため、受けた衝撃が心臓に伝わりやすいことが発生要因の一つではないかと考えられています。
●Head=頭部(頭頸部)外傷
野球は直接何かとぶつかるような機会(コンタクト)の少ないスポーツと言われていますが、まれに選手同士でぶつかったり、打席中でヘルメット付近にボールが当たったりしてしまうと頭部外傷を引き起こすことがあります。また直接ぶつかっていなくても衝撃によって頭部が大きく揺さぶられた状態になると脳振盪(しんとう)などを起こすことがあります。特に脳振盪は見た目にもわかりにくく、軽視されがちですが、時間とともに脳の機能障害が見られる場合があるため、慎重に対応することが大切です。
●Heat=熱中症
熱中症は外気温や湿度などさまざまな環境要因によって、体内の体温調節機能がうまく働かなくなり、体の中に熱がこもって起こる体調不良の一つです。体の水分が奪われ(脱水)、めまい、頭痛、筋けいれん、吐き気といった症状がみられ、進行すると中枢機能に支障をきたし、反応がにぶい、言動がおかしい、意識レベルの低下などが見られるようになります。このような状態を見かけたらすみやかに救急車の要請とAED(自動体外式除細動器)の確保、呼吸や反応の確認をした後の心肺蘇生法(CPR)実施などを行うようにします。
「3H」と呼ばれる緊急性の高いアクシデントが実際に起こることは非常にまれですが、万が一に備えてやるべきことやAEDの場所を確認したり、病院をリストアップしておくことは大切です。また救急車を要請してから実際に現場到着するまでの平均時間は8.6分(平成30年)であり、その間は現場にいる皆さんの対応がその後の経過を左右します。定期的に用具、施設の確認を行い、いざというときにすぐに対応できるように準備しておきましょう。
文:西村 典子
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