利き目を知ろう
バントは正面からボールを見て構えるため、比較的利き目の影響を受けにくい
私たちは両目を使って、ものが立体的に見えるように調整しますが、多くの人は左右どちらかに「利き目」が存在します。自分の利き目を確かめる方法としては、親指と人差し指を使って丸を作り、両目で見ながらその丸の中に目印となるものを入れます。
次に片目を交互につぶって、両目と同じように見える方が「利き目」となります。一般的には右が利き目という人が多いようですが、利き目の方からより多くの情報を得ていることになります。
対象物を正面から見る場合は、右目からの距離と左目からの距離はほぼ同じなので、左右での見え方の違いはわからないと思いますが、これがバッティングのように対象物を横から見る場合は、見え方の違いが感じられるかもしれません。右打者で利き目が右目というケースを考えてみましょう。打席からピッチャーを見るとき、対象物(ピッチャー)に対して左目はその距離が近く、右目はその距離が遠くなります。
情報は右目からより多く得られやすいので、体から遠いアウトコースのボールが見やすく、体に近いインコースのボールが見づらいということが考えられます。インコースが苦手という選手の中には利き目がその要因となることもあります。打席に入る前にしっかりと顔をピッチャーに向けるようにすることで、ボールを両目で見るように工夫する場面を見たことがあるでしょう(元メジャーリーガーのイチロー選手など)。
またバッティングの調子が上がらないときに、バント練習でボールを正面から見るようにするといった工夫をしたことがある選手もいるかもしれません。さらに最近ではスマホ画面を利き目で見続けてしまい、両眼視(両目の情報を統合してものを見る能力)の働きが低下することも指摘されています。スマホを見る時間が長くなればなるほど、野球の技術にも影響を及ぼすことになるかもしれません。
利き目があること自体は悪いものではありませんが、偏った見方や使い過ぎなどによってプレーに影響を及ぼすことが懸念されます。一般的な眼球運動(サッケード運動:頭を動かさずに指を左右、上下等に動かしてそれを目で追う、パシュート運動:動いている対象物を目で追う)などとともにものをまっすぐ見られるように普段の姿勢を意識してみることも大切です。
参考書籍)勝負強さの脳科学 林成之著(朝日新聞出版)
文:西村 典子
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