野球選手はお尻が大きくなる?
お尻が大きいということは野球に適した体に変化していることを意味する
野球の競技特性を考えてみると、地面に足を着いた状態で行う動作が多く、下半身の筋力が必要であることは皆さんご存じのとおりだと思います。止まった状態から動き出すとき、片足でバランスをとるとき、短時間で大きなパワーを生み出すときなど「投げる」「打つ」「走る」といった動作を考えてみると、体幹はもちろん、下半身、特に股関節周辺部の動きがパフォーマンスに大きな影響を及ぼします。また守備や走塁などでは低い姿勢を維持して動作を行うことが多いため、その姿勢が維持できるだけの筋力が必要となります。
こうした動作を何度繰り返しても同じように行う(再現性を高める)ためには、野球の技術練習と並行しながら下半身の筋力トレーニングを行うことが必要不可欠です。スクワットはただ単に下半身の筋力強化にとどまらず、股関節の動きを重視して行うようにしないと腰背部を痛める原因ともなります。また足を一歩踏み出して戻るランジ動作や片足のスクワットなどにおいては、片足で体を支える局面がありますが、このとき体が横方向へ流れないように制御する筋肉の一つにお尻の横側にある中臀筋(ちゅうでんきん)が挙げられます。地面に片足をついて踏ん張って投げる動作などでは、着地足側の中臀筋がバランスを崩さないように働きます。片足でのトレーニング時には「股関節に体重をのせるイメージ」で行い、重心移動によるバランスの変化に対応することが求められます。
このように野球での反復練習や、トレーニングによって下肢筋力が強化されて動作の安定性が高まってくると、自然と股関節周辺にある筋肉も太く、大きくなり、結果としてお尻が大きくなってきます。またお尻の筋肉は下肢から上肢へと力を伝達し、大きなパワーを生み出す原動力としても働きます。「野球選手はお尻が大きい」と言われる理由としては、野球の競技特性にあった体つきに変化したからということが言えるでしょう。中にはズボンが履けなくなった、ジーンズが履けなくなったと嘆く選手も見かけますが、それは野球選手らしい体つきに変化したことを意味しています。今までできなかったプレーができるようになったり、パフォーマンスアップにつながったりするものであるとポジティブにとらえることが大切です。
文:西村 典子
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