ストレッチと伸張反射
パートナーストレッチでは相手の様子をよく観察し、伸張反射を起こさないように注意しよう
選手の皆さんが自分で取り組みやすいコンディショニングの一つがストレッチではないでしょうか。ただストレッチといってもどの場面で行うか、どのような目的で行うかによって、内容が変わるため、どれが正しいのかという疑問を持つこともあるでしょう。場面に応じて、個人に応じてその正解は変わりますが、今回はストレッチをするときに理解しておきたい伸張(しんちょう)反射について紹介します。
私たちは「ボールが当たりそうになったらよける」というように、何かに反応して行動を起こすことが多いのですが、伸張反射は脳からの指令を待たずに起きる脊髄反射の一つです。筋肉には、伸び縮みんだりしたときの状態を察知する2つの運動感覚器官(筋紡錘:きんぼうすい、ゴルジ腱器官)があります。
ストレッチでは筋肉が急激に引き伸ばされると、筋肉が伸びすぎて筋線維がダメージを受けないように、その筋肉を収縮させて守ろうという反射(=伸張反射)が起こります。特に激しく反動をつけて行ったり、パートナーストレッチでギューギューと強い力で相手の体をむりやり伸ばそうとすると、逆に「これ以上伸ばすと危険」という信号によって筋肉は縮んでしまいます。クールダウンなどに用いられる静的ストレッチは、息を吐きながらゆっくりと伸ばすことが基本ですが、これは伸張反射を招かないようにするためです。
これとは反対にこれから体を動かそうとするウォームアップ時には、わざと伸張反射を誘発して体のキレ(素早い動き)を高めようとする方法もあります。伸張反射が起こると頭で考えるよりも体が先に反応し、筋肉が素早く収縮するというメカニズム(ストレッチ・ショートニング・サイクル=SSC)を活かした方法です。たとえば足首を固定した状態で設置時間をより短くしながらジャンプを行うと、ふくらはぎの筋肉が素早く収縮するためスポーツ動作への変化が期待できます。
伸張反射という体のメカニズムを理解しておくと、コンディショニングやトレーニングなどにもより興味がわいてくると思います。特にストレッチの時は筋肉を伸ばしすぎないように気をつけて行うようにしましょう。
文:西村 典子
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