ストレッチをすると瞬発力が落ちる?
練習や試合前は積極的に動的ストレッチを取り入れよう。
ウォームアップは練習前に必ず行うコンディショニングの一つですが、皆さんは普段どのようなウォームアップを行っていますか?軽くジョギングなどで体温を上げてからストレッチを行うパターンが一般的だと思います。ストレッチは筋肉や腱の柔軟性を高めて、関節可動域(関節の動く範囲)を拡げることに役立ちますが、方法によっては一時的なパフォーマンスの低下をもたらすという研究報告もあります。ウォームアップにより適しているのは体を動かしながらエクササイズの中で伸ばしていく動的ストレッチであり、逆に一時的に筋出力を下げると指摘されているのが静的ストレッチです。
筋肉をゆっくりと伸ばす静的ストレッチは関節可動域を拡げ、柔軟性を高める反面、筋肉が伸びることによって爆発的な力を発揮するパワーが一時的に落ちるといわれています。これには静的ストレッチを行う時間にも関係し、30秒間の静的ストレッチと6秒間の静的ストレッチを比較検討した研究では、30秒間の静的ストレッチにおいて関節可動域は拡がったが筋出力は低下したと報告されています。ただし6秒間の静的ストレッチでは逆に関節可動域に変化はみられなかったものの、筋出力は向上したと指摘しています。
「ストレッチをするとパワーが落ちるから」といってストレッチをしない状態で運動を始めてしまうと、関節可動域や筋肉の柔軟性が低いレベルのままプレーしてしまうことになってケガのリスクが高まりますが、じっくりと筋肉を伸ばしてしまうとバネのような瞬発力は一時的に落ちてしまう可能性があります。しかしその影響は静的ストレッチの時間によっても変化するため、一概に「静的ストレッチをするとパフォーマンスが下がる」と判断してしまうことは避けたほうが賢明でしょう。ウォームアップにおいては静的ストレッチの時間を短く、動的ストレッチをより多く取り入れることが筋出力のパワー低下を防ぐことにつながると考えられます。
文:西村 典子
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