貧血というと女子選手によく見られるものですが、実は激しい運動を行う男子選手においても見られることがあります(朝礼などで長時間立っていたときに、フッと目の前が真っ白になって倒れてしまうようなものは脳貧血といって発症メカニズムが異なります)。一般的に貧血は「血液中のヘモグロビン濃度が低下した状態」をさすため、血液成分に由来します。そしてその代表的なものが鉄欠乏性貧血です。

 体のすみずみにまで酸素を運搬するヘモグロビンは鉄分をもとに作られますが、鉄分が不足すると血液中のヘモグロビン濃度も下がります。貧血全体の約7割がこの鉄欠乏性貧血だと言われています。日頃から激しく体を動かすスポーツ選手は、大量の汗をかくことによって汗の中に含まれるミネラル分が失われ、鉄分も汗とともに体外へ排出されてしまうことが知られています。一般の人よりもたくさん汗をかくスポーツ選手は、より多くの鉄分が汗とともに失われますので、鉄欠乏性貧血を起こしやすいと考えられています。
 症状としてわかりやすいものは顔色が悪い、疲れやすい、安静にしていても脈が早いオーバートレーニング(慢性疲労)症候群によるものなど。ただしすべてが貧血によるものではないことも多いため、このような状態が続くようであれば、まず医療機関で検査を受けるようにしましょう。

 鉄分を補うことはまず食事から改善しましょう。鉄分には肉や魚など動物性由来の食品に多く含まれるヘム鉄と、穀類、海藻、緑黄色野菜に多く含まれる非ヘム鉄の2種類が存在しますので、どちらもバランスよく取ることが理想的です。またビタミンCを多く含む新鮮な野菜や果物を一緒に食べると、非ヘム鉄の吸収が良くなります。食事の改善によっても貧血が改善しない場合は医師の指導の下に鉄剤を服用することもあります。スタミナアップを目的とした注射などはパフォーマンスアップ効果がさほど期待できないものであり(ドーピングの禁止薬物ではない)、将来のドーピングに対する心理的抵抗を下げるだけではなく、鉄分の過剰摂取によって内臓に大きな負担をかけることになるので、あくまでも鉄分は食事や、処方された範囲でとるようにしましょう。

文:西村 典子
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