体幹がもつ3つの役割
体幹の役割を理解し、パフォーマンスアップにつなげよう。
普段から体幹トレーニングを取り入れているというチームや選手は多いと思いますが、そのトレーニング内容を聞いてみると自重で行う腹筋・背筋のトレーニングを指していることが多いと感じます。もちろん間違いではないのですが、体幹を安定させるためにはもう少し広い範囲でとらえる必要があります。
体幹とは全身から頭部と手足を除いた胴体部分を指し、そこには脊柱(せきちゅう)(背骨)、胸郭(きょうかく)、肩甲骨、骨盤といった骨構造とその骨に付着する筋肉などで構成されます。筋肉は内臓の近くにある深層筋(インナーマッスルとも呼ばれる)とその上に位置する表層筋に分類されます。
たとえば一般的に腹筋と呼ばれているものは表層筋である腹直筋を指すことが多く、筋肉を収縮させて体を丸めることができます。一方、腹直筋の深層に存在するのが腹横筋と呼ばれる筋肉で、こちらは大きな動きをもたらすのではなく、コルセットのように体を支える役割があります。体幹を鍛えるという場合には大きなパワーをもたらす表層筋とともに、体を安定させる深層筋のトレーニングを行うことを心がけましょう。
野球のパフォーマンスアップに欠かせない体幹はどのような役割を持っているのでしょうか。大きく3つ挙げられます。
1)姿勢の維持
脊柱には荷重ストレスをやわらげるためのS字カーブが存在し、胸郭と体幹を支える筋肉は内臓の保護に貢献します。体幹を支える骨構造にゆがみが生じたり、周囲の筋肉群が衰えてくると、姿勢が崩れる一因となります。
2)動きを支える土台
腹直筋や広背筋など体幹の表層にある筋肉は脊柱や胸郭などの骨組織と連動し、さまざまな動きを可能にします。脊柱は7個の頸椎、12個の胸椎、5個の腰椎によって構成されていますが、体の前後屈は主に腰椎が、左右へ回旋動作については主に胸椎がその動きを担っており、そこに付着する筋肉とともに複雑な動きを支える土台として働きます。
3)運動軸としての役割
スポーツにおける複雑な動作は手や足など四肢の動きによってもたらされますが、体幹が安定していないと運動軸もズレてしまい、「軸がぶれた」状態となってしまいます。正しい動作を繰り返し行うためにも、運動軸を支える体幹をしっかりと機能させることが大切です。
体幹を強化して野球に活かすためには、ただやみくもに腹筋・背筋の回数を重ねるのではなく、体幹の役割を理解してトレーニングに取り組むようにしましょう。
文:西村 典子
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