手をついて肩を痛めたとき
帰塁時にベースと腕の距離がうまくあわずに痛めるケースがみられる
手をついて肩を痛めたとき
野球は他競技と比べて突発的なケガ(急性外傷)の少ないスポーツであるといわれていますが、接触プレーなどでケガをすることはまれに見られます。この中でも手をついて滑るスライディングであったり、帰塁動作やダイビングキャッチなどでグランドに手をついた際、手指のケガのみならず、肩関節を痛めることがあります。その代表的なものが肩関節の脱臼です。
手をついて肩に衝撃が加わるとガクッと上腕骨が前に移動するような感覚があったり、自分自身で「関節が外れたかも」とわかる場合が多く、完全に脱臼してしまうと強い痛みで関節を動かすことができなくなります。また完全に関節が外れた状態ではなく、「何となく外れたかも」といった状態でも、関節内部の軟部組織は傷んでいることが多く、投球動作を行うたびに痛みがあったり、ゆるい感覚が抜けなかったりします。関節には安定性を高めるための腱板(インナーマッスル)や関節唇といった軟部組織がありますが、脱臼によってこうした組織が損傷し、本来の機能が低下したことが原因だと考えられます。
特に注意したいのは軽度の脱臼です。しばらくすると痛みがやわらぐため、「よくなった」と思ってプレーを再開すると再脱臼を繰り返しやすくなります。何度も脱臼を繰り返すようになるとさらに肩関節の周辺は関節を支える支持能力(安定性)が低下し、また脱臼を繰り返すといった悪循環におちいりやすくなります。これがいわゆるルーズショルダー(肩関節の支持能力が低下し、ゆるさが残る状態)と呼ばれるものです。ルーズショルダーはプレーに支障がないことが多いため、そのままにしておくことも多いものですが、適切な対応とリコンディショニングは肩の状態を改善させることにつながります。
手をついて肩を痛めるケースは比較的よくみられるケガの一つです。最初に受傷した段階で医療機関を受診し、どこが傷んでいるのか、どのくらい患部を安静させればいいのか、リハビリテーションはどのように進めていけばいいのか、といったことについて指導を受けるようにし、ケガを繰り返さないようにしましょう。
文:西村 典子
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