5月28日、スポーツメーカー・ミズノは、東京都千代田区神田にある直営店・MIZUNO TOKYOでクラフトマンの名和民夫さんによるバット削り実演会とトークショーが開催された。

 土曜の夕方にもかかわらず、老若男女問わず多くの参加者が集まった。こうしたバット削りのイベントは、新型コロナウイルスの蔓延が始まってから初とのことで、期間にしておおよそ1年半の月日が空いたという。

 イベント自粛期間に実施できなかった分を全て見せるかのように、クラフトマンとして30年間で培った技術を当日は余すことなく披露した。

 会場に用意された素材を回転させる機械にはめると、まずはバットの中心となる部分を確認し、そこから長さの調整に入った。慣れた手つきで素材があっという間に短くなると、続いてグリップ部分の加工に入る。

 手が触れる部分ということもあり、「一番大事な部分です」とバット削りにおいては最も重要な位置づけであることを強調したうえで作業に入る。

 大胆にバットを削りながらも、時折道具を持ち換えて刃物の角度を変えて微調整する姿は、まさに職人そのもの。めったに見られない職人技に参加者も食い入るように見ていくと、次第にグリップの形が整っていた。

 グリップの長さや太さ、さらにはグリップエンドの形状が決まれば、あとは打球面の調整。「刃物の切れ味を落とさないようにするために塗ります」と途中で水をバットに塗るという驚きの工夫をしながら太さを調整していき、最後は研磨にかけて表面をきれいにして、木製バットが完成した。

 時間にしてわずか20分前後。迷いなくバットを削っていく職人の技術に、時間が経つのを一瞬忘れてしまったが、完成したバットを参加者も手に取って感触を確認したが「凄いです。いいですね」と一言。ほんの少し前まで木材ものがバットに生まれ変わったことに驚き、感動しているようだった。



職人技を見せる名和民夫さんに参加者も釘付け

 バット削りを終えてから、トークショーと参加者からの質問コーナーでクラフトマン・名和さんが築き上げてきた価値観や経験談などを伝え、最後はサイン会で1時間のイベントは終了した。

 イベント終了後、名和クラフトマンは、「世間の方々に道具というのはこういった工程を踏んで作られていることを知ってもらえたら、非常に有意義なことかなと思っています」と話した。ミズノの技術力の高さはもちろん、モノづくりの深さと面白さが伝わるようにしていたが、参加者の反応を見ていれば、十分に伝わっていたようだ。

 今後は「預かってきた技術を後輩に伝えたい」と、職人技と心意気を引き継いでいく意志を口にした名和クラフトマン。
 一見すると単純作業に見えるが、経験で培った絶妙な力加減とインスピレーション、そして技術力の3つが噛み合って、初めてプロ選手の活躍を支える1本の木製バットが生まれていた。

 これらが後世までつながっていく限り、今後も優れた木製バットが日本から誕生し続けることを確信せずにはいられなかった。