今や球児が憧れる二塁手といえば、菊池涼介(武蔵工大二出身)だ。今年は二塁手として史上初の守備率10割を達成した。そんな菊池はグラブクラフトマンとのリモート対談を行った。菊池が語った内容はプレイヤーとしては必見の内容だった。グラブのこだわりを紹介したい。

 報道陣に配布された資料を見ると、内野手用としては標準的な大きさで、捕球後にすぐにボールを握り直せるように操作性を重視したシンプルな設計と記されている。

 しかし、グラブについて語りだした菊池の話した内容はとても繊細で、ここまでデリケートにグラブを扱っているのかと思わせた。グラブの硬さは「硬すぎず、柔らかすぎず」。そしていかにフィットするか。

 まずグラブの革の材質からこだわる。特に親指に入ったフィット感を大事にしており、このフィット感を維持するために、表革は少し柔らかめの革(キップレザー)を使用、裏革(手のひら部)はソフトな手触りで手にしっくりなじみやすい革(ディアスキン)を使用している。特に親指のフィット感にこだわっており、少しでも曲がる感覚があったりしてしまうなかなか使えない。またグラブの紐が切れた時は、再び紐を入れ直すが新しい紐で締め直すと硬くなってしまい、「使用感」がなくなってしまう。使用感が残るように締め直しを行うなど、親指は最重要ポイントと捉え、設計をしてきた。試行錯誤を重ねても、また使うごとに感触も変わってくる。それにも応えていかないといけない。

 「グラブに違和感があってしまうと、守ることに不安を覚えています。だから守ることができないので、使用はできないんです」とはっきりと語る。守備職人らしいこだわりだが、ミズノのグラブクラフトマンは菊池の要求をクリアし、「ほぼ指のような感覚」というぐらいフィット感のあるグラブを作り上げた。



こだわりのつまった広島東洋・菊池涼介のグラブ 写真提供=ミズノ社

「僕のわがままを聞いてくれて本当にありがたいです。ミズノさんは僕だけではなく、選手たちの色んな思いを形にしていただけるメーカーだと思いますので、使い続けている理由です」と感謝の言葉を述べた。

 菊池の話で驚かされたのはグラブの手入れだ。これは一選手の意見として聞いてもらえばと思う。

「僕はシーズン中で、1つのグラブを使い通してますが、グラブにオイルやグリスを塗ることはありません。柔らかくなったり感覚が変わったりするじゃないですか。それが嫌なんです」

 菊池以外にも捕球面には絶対に塗らないという選手もいれば、もちろん手入れをする選手もいる。ではどうやって高い品質のまま手入れをしているのか。菊池はグラブをはめた時の形を維持したまま、ロッカーなどに保存を行う。曲げたりしてしまうと感覚が変わってしまうためだ。もちろん1個だけで行かない時もある。その場合、菊池は新しいグラブを使うのではなく、スペアにしていた古いグラブを使用する。

 なぜ古いグラブを使用するかといえば、菊池の繊細な感覚をクリアしたアイテムだからだ。

 現在は感染対策をしながら、自主練習を行っている。史上初の無失策に終わった2020年だが、フル出場ができず、Bクラスに終わり、菊池自身は悔しい1年だった。

「良い時よりも、悪い時の記憶がフラッシュバックするんです。そういう気持ちが練習をしないといけない気持ちをかきたてるんですよね。だから僕どうこうより来年は優勝したんです」

 新たなグラブとともに菊池は2018年以来の3年ぶりのセ・リーグ制覇へ向けて攻守で躍動する。

(記事=河嶋 宗一