
18日に開かれた日本高野連の理事会では、2年後の2024年シーズンから完全移行する新しい基準の金属製バットが承認された。今シーズンから2年間は移行期間として、現行の金属製バットと新しい基準の金属製バットのどちらも使用が可能で、2024年シーズンからは新しい基準だけを使用することになる。
現行の金属製バットは最大径67ミリ未満。これを新しい基準では64ミリ未満と細くする。一方で重量の900グラム以上を下げてしまうと軽くなるため、打者のスイングスピードが上がってしまう。そこで打球部の肉厚を3ミリから4ミリ以上にして、900グラム以上を維持する。トランポリン効果を減衰させ、打球速度を抑えることが狙い。
新基準策定の目的は2つあり、1つは打球速度を抑えて投手の受傷事故を防止すること。一昨年の第101回選手権大会で、岡山学芸館の投手が打球を顔面に受けて頬骨を骨折する事例があった。投手板からホームベースまでの距離は18.44メートルだが、投手が投球後には3メートル程度前に出るため、実際には15メートルから16メートルになる。
1997年の第79回大会で新湊(富山)の投手が顔面に打球を受ける事例があったが、日本高野連が事故映像を分析したところ、打点から投手が打球を受けるまでの距離は15.84メートルだったという。この距離をもとに現行基準バットと新基準バットの打球初速を比較すると、平均速度が96.3パーセント、初速は96.4パーセントに抑えられ、約3.6パーセントの減少となるデータを得られた。
もう1つの目的は、「投手の障害予防に関する有識者会議」から、「昨今の高校野球は打高投低の傾向が見られ、投打のバランスを見直し、投手の負担軽減を目指すうえでは、金属製バットの反発性能を抑制する必要性を求める」と声が上がり、提言を受けたこと。打球速度を抑えることで投手にとっての負担を軽くしたい狙いがある。
新しい基準の金属製バットはメーカーにも負担を強いるため、価格も上昇することが予想される。そのため使用する選手・チーム側にも経済的負担ができてしまう。
現行モデルの金属製バットは使用頻度にもよるが、耐用年数は1~2年と言われる。そこで完全移行まで2年の期間を設け、金属製バットを買い替えるタイミングで新しい基準のバットを購入しましょうという形が理想だという。
中でも今年4月に入学する新1年生は、3年生になると新しい基準の金属製バットを確実に使うことになる。指導者は新1年生の入部時にそのことを伝えることが求められそうだ。
逆に4月からの2年生と3年生は2024年3月までに卒業する生徒がほとんどのため、飛びにくい新しい基準のバットを慌てて使用する必要性はないとも言える。
まずは指導者が新しい基準の金属製バットをできるだけ早く手にし、感覚などや打球の飛び方、高野連、メーカーからの情報などを勉強して、新1年生の指導に役立てていくことが、近い目標となりそうだ。