クラーク国際が三浦雄一郎校長の89歳誕生日に初優勝!北海道162校の頂点に!
優勝を決め、マウンドに歓喜の輪を作るクラーク国際ナイン
秋季北海道大会決勝が10月12日、[stadium]札幌円山球場[/stadium]で行われた。創部8年目で2年連続3度目出場のクラーク国際が3対1で旭川実を下し、初優勝を飾った。
投げては先発の剛球右腕・辻田旭輝(あさひ)投手(2年)と、継投した左腕エース山中麟翔(りんと、同)の2本柱が2人で1失点と好投。打っては、初回に4番・麻原草太捕手(1年)の左前適時打で先制。6、7回にも1点ずつを加え、粘る旭川実を突き放し、北海道162校の頂点に立った。
9回裏2死一塁。自分の方に向かってくる力のない打球をしっかりグラブにおさめ、辻田投手が一塁に送球した。辻田は一塁に投げた直後に右手を、一塁手の白取太郎主将(2年)は捕球すると同時に両手を、空に突き上げた。
秋晴れの空の下、歓喜の輪を作ったのは、1回戦で秋季北海道大会初勝利をあげたばかりのクラーク国際だった。全国優勝2度の駒大苫小牧、春夏甲子園連続出場中だった北海、2015年のセンバツで準優勝した東海大札幌と、厳しいトーナメントを勝ち抜いて手にした栄冠。「夢のようだ」。
廃校となった駒大岩見沢監督時代の2008年春以来14年ぶり、クラーク国際の指揮官としては初のセンバツ出場を確実にした佐々木啓司監督が、喜びにわく選手たちの様子を眺めながらつぶやいた。
昨夏、北北海道の独自大会で優勝したが、甲子園での全国大会は開催されなかった。続く秋季大会は北海道大会まで駒を進めたものの初戦敗退。佐々木監督は「来年夏まで(甲子園の可能性は)ないのか。長いな…」と、力なく口にし、球場を後にした。
その冬、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、恒例だった春の本州遠征も実施の見通しが立たず、中止となった。「うちのチームは遠くから来ている選手も多い。3年間で何か少しでも『クラークで野球をして良かった』という思い出を残してあげたい」と佐々木達也部長。真冬の平日に札幌ドームを借りて練習し、選手のモチベーションを上げたこともあった。
監督インタビューで話す佐々木啓司監督
待ちわびた今夏の北北海道大会は、初戦で同じ空知地区の滝川西に苦杯を喫した。「昨年は北北海道大会を優勝しても甲子園に行けませんでした。今年は1戦目で負けてしまった。2年連続で悔しい思いをした先輩たちの姿を見て、自分たちが甲子園に行くにはどうしたらいいか考えた」と白取主将。夏まで試合前の定番だったミーティングを、週4~5回と大幅に増やし、「小さなことでも全ての選手が共有できるようにした」のが最初の行動だった。
試合後に取材に呼ばれた選手は、全員が目標を「センバツ出場」と答えた。そして「僕たちは北海道で一番強い」と異口同音に話し、その言葉を結果で証明した。
この日は、エベレスト登頂に3度成功した冒険家・三浦雄一郎校長の89回目の誕生日と重なった。昨夏に頸椎硬膜外血腫を発症して手足の一部に麻痺が残りながらも、苦しいリハビリを続け、今年6月には富士山で東京五輪の聖火ランナーを務めるほどまでに回復した。
「いつも挑戦することの大切さを教えてくれる校長先生に、勝利をプレゼントしたかった」と山中。試合を見届けた三浦校長は「明治神宮大会も、甲子園も、もちろん応援に行きますよ」と笑顔で約束した。
現在のコロナ禍が収束していけば、明治神宮大会(東京・神宮球場、11月20日から予定)、そして来春のセンバツ甲子園と、創部3年目だった2016年夏の甲子園以来の全国大会が続く。白取主将は「センバツの代表に選ばれたら、チーム一丸となって、まずは楽しんで、躍動してきます」と力強く言った。5年前の夏、聖地で先輩たちが落としてきた〝勝利〟という忘れ物を、クラーク国際が取り戻しに行く。
初回に先制タイムリーを放つ麻原捕手
優勝を決め、抱き合う辻田投手(中央)と麻原捕手(右)
スタンドから試合を見つめる三浦雄一郎校長