【準硬式】U15経験者、強豪校など!逸材多数の新人戦の大事な役目
7月も終盤に入り、各地で開催されている夏の大会は佳境を迎えつつある。甲子園を目指す熱戦が繰り広げられる一方で、半数の高校が新チームをスタートさせている。
3年生は高校野球を引退し、大学進学してからも野球を続けるかどうかを考えている球児たちは多いと思う。そんな球児達に対して、今回は硬式、軟式のどちらの良さも併せ持ったあるカテゴリーを紹介していきたい。
1年生からでもチャンスをもらえる貴重な場所
優勝した中央大学
試合前のセレモニーや打席に向かう選手へBGMを流す。さらに動画によるライブ配信も実施されるなど、プロ野球顔負けの演出が続く。梅雨による曇り空が広がる6月下旬、名称が変わったスリーボンドスタジアム八王子は、高校野球とはひと味違う特別な空気が漂っていた。
明るく陽気な雰囲気のグラウンドからは、金属音が聞こえてきた。やはり硬式野球がやっているかと思われたが、よく見ると硬式野球ではなく、使われていたのは準硬式だった。
東都大学準硬式野球連盟は、6月頃に大学1、2年生を対象とした新人戦(株式会社アルシスコーポレーション協賛)を2018年より開催。第4回大会を迎えた2021年は、3月の関東地区選手権と東都1部リーグを制した中央大が、國學院大を5対1で下して優勝を飾った。
関東地区選手権と同じ顔合わせとなった一戦は、2回に中央大の4番・川満 剛(2年・糸満出身)のセンターへのホームランから試合が動く。追いかける國學院大も3回に1番・森川稔弘(2年・弥栄出身)のタイムリーで追いつくが、5回に中央大8番・功刀 史也(1年・山梨学院出身)の勝ち越し打などで3点を奪取。4対1と勝ち越した。
7回にもダメ押しの1点を加えると、中央大は最終回に石井竜弥(2年・浦和学院出身)が試合を締めて優勝を飾った。MVPに輝いた石井は「優勝を味わうことが出来て良かったです」と優勝の喜びをかみしめた。
3位決定戦は、日本大と青山学院大の一戦が行われた。前回大会の決勝カードだったが、日本大先発・金築拓弥(1年・松江南出身)の好投や、4番・中島 健輔(2年・日大鶴ヶ丘出身)の3打点の活躍など11対0で日本大が3位を掴んだ。
日本大・金築拓弥(1年・松江南出身)など地方の逸材も目立つ
開催して4年が経った準硬式の新人戦だが、硬式の東京六大学でもフレッシュリーグという名目で新人戦は開催されている。一見すると同じものだと感じられるが、詳しく見ていくと中身は違いがある。
まずは参加チームと試合数が違う。3月の関東地区選手権で3部リーグの躍進したことを受けて、今大会は1~3部を対象に12チームが新人戦に参加した。3グループに分かれて、1グループ4チームによる予選会を実施する形式にした。
ここで成績1位のチームが決勝トーナメントに進んだが、たとえ決勝トーナメントに進めずとも各チーム最低でも3試合はすることが出来る。硬式の東京六大学は2試合で終わってしまうことを考えれば、若干ではあるが多くの試合を経験できる。
実際に1年生の金築からは「1、2年生は試合に出るチャンスが少ないので、この時期に大会を開催して下級生にチャンスくれるのは良いことだと思います」とチャンスが広がることに感謝の思いを述べた。
また今大会で中央大の主将を務めた山崎大翔(2年・花巻東出身)は、「この大会でやりたいこと。やってきたことを披露できるように練習をやってきました」とモチベーションアップにもつながっていたことを語る。
[page_break:リーグ、そして準硬式界の発展のために]リーグ、そして準硬式界の発展のために
学生同士で大会を運営するところも教育の一環である
そんな選手たちの背中を押そうと、今大会から新しくBGMを使った演出を採用した。また、遠方にいて球場で試合を見られない保護者のために、動画配信も実施するなど、4回大会は新たな試みを実行して、さらによりよい大会へ改善を繰り返してきた。
第1回大会から運営に携わっているマネージャーたちに話を聞いても、その成長は肌で感じている。
「運営をしていて、3部など普段交流の少ないチームとも連携が取れるようになりました。そのおかげでリーグ全体の成長に繋がっていると感じています」(帝京大 石川泰成 開智未来出身)
「3部の選手たちが1部のスピード感や野球を体験できる良いきっかけとなる大会だと思うんです。リーグ全体はもちろん、準硬式の発展のためには大事なことだと思うので、入れ替え戦があるという意味でも、これから楽しみです」(日本大 井上絢一朗・佐賀商出身)
そんな新人戦だが、新人戦の開催のためにスポンサーもついているのも、準硬式ならではの特徴的だ。このことについて、「スポンサーさんがいるから大会が開けますので、教育の面で考えれば、選手たちがその方々への思いをもって野球をすることに大きな価値があると思います」と杉山智広理事長は話す。
新人戦を運営し始めて4年が経過し、杉山理事長もリーグ全体の変化を感じられていた。
「3部のチームからは、『1部とやることで、沢山学べることがあります』と言うことで喜びの声が沢山聞こえるようになってきました。
今回の形が今後のベースになると思うので、微調整をしながらですが、試合を通じて選手たちには人として成長してもらえる。教育の場として今後も開催したいと思います」
選手としては練習だけでは物足りない部分もあるだろう。試合でライバルたちと競い合って、成果を発揮して勝つ喜びを味わう。負けた悔しさをバネにさらに成長する。そうしたところに、真剣勝負の醍醐味はあり、選手たちはそこを求めて辛い練習も乗り越えるのだ。
試合ができる機会を、準硬式野球の経験者や連盟といった縦のつながりでサポートする。そこからは同世代の仲間たちとの横のつながりを活かして主体的に動かす。縦と横のつながりを組み合わせながら、教育の一環という側面を持って開催していくのが、準硬式の新人戦なのだ。
第5回大会も微調整をしながら開催されていく予定とのことだ。硬式野球での継続は難しくても、準硬式ならば実績は関係ない。新たな野球の選択肢として、引退したばかりの3年生は考えてみるのもいいのではないだろうか。
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