1年目はファームで長打力発揮!次世代の大砲候補の期待がかかる井上広大(履正社出身)
阪神・井上広大(履正社出身)
福岡ソフトバンクの優勝で幕を閉じた2020シーズンのプロ野球。広島東洋・森下暢仁や東北楽天・小深田大翔をはじめ、ルーキーたちもその盛り上がりに大いに貢献したが、彼らのように一軍で活躍するルーキーもいる一方で、高卒ルーキーたちは主にファームで力を蓄えた選手が多かった。未来のプロ野球を盛り上げるプロスペクトたちのルーキーイヤーを振り返りつつ、2021年シーズンの展望を見ていきたい。今回は阪神タイガースの井上広大(履正社出身)だ。
多くの項目でファーム上位の成績をマーク
履正社では3年春・夏と甲子園に出場、夏には全国制覇を達成し、星稜との決勝戦では奥川恭伸から一発も放った井上。高卒1年目はファームで長打力を発揮し、一軍でも初安打をマークした。
▼今シーズン成績
6試合 打率.091(11打数1安打) 0本塁打 1打点 0盗塁 0四球 5三振 長打率.182 出塁率.091(一軍)
69試合 打率.226(248打数56安打) 9本塁打 36打点 0盗塁 29四球 96三振 長打率.391 出塁率.307(ファーム)
2020年シーズンは主にファームで経験を積み、ウエスタン・リーグで69試合に出場した井上。打率.226は規定打席に到達した15人中13番目と、決して高いとは言えない数字だったが、リーグ5位タイの14二塁打、同2位タイの9本塁打を放ち、同6位の長打率.391をマークした。さらに同3位の29四球を選び、出塁率.307は同10位。多くの項目でウエスタン・リーグ上位の成績を残した。同1位の96三振も喫したが、2併殺打は規定打席に到達した右打者では最も少ない数字だった。
続いて、井上のファームでの打席数とOPSの推移を見ていこう。
井上広大の打席数とOPS(2020年・ファーム)
打席数を示す棒グラフが増え続けていることからシーズンを通して試合に出続けていたことが分かる。さらに、OPSも概ね0.6を越えていた。開幕直後の6月は5試合17打数3安打と苦しんだが、7月に入ると4本塁打を放ちOPSを急上昇させる。8月は長打率・出塁率ともに数字を落としてしまったが、9月には月間OPS.914をマークするなど復調。10月も好成績をマークして、一軍昇格をつかみ取った。
10月14日の中日戦に7番・右翼で初出場・初スタメンを果たすと、16日の東京ヤクルト戦では8回無死一塁の場面で代打で登場。5球目のツーシームをセンター後方にはじき返し、初安打となるタイムリーツーベースをマークした。一軍での安打はこの1本のみに終わってしまったが、インパクトを残したシーズンだった。
1年目は一軍・ファーム合わせて300打席近くに立つなど、多くの経験を積むことができた井上。課題としては、打撃の精度が挙げられるだろう。打率3割とまではいかなくとも、2割台後半に乗せることができれば、長打率・出塁率とも向上し、OPS0.9越えも狙える。2年目はファームで年間通して出場し、400打席以上・OPS0.9以上を期待したいところだ。その上で、一軍でプロ初本塁打を放つことができれば言うことなしだろう。
甲子園は本塁打が出にくく、長距離砲が育たないことが阪神にとっては長年の課題となっている。2020年に本塁打王争いを繰り広げた大山悠輔が四番に定着しつつあるが、井上には大山に次ぐ主砲候補として、スケールの大きな打者になることを期待したい。
(記事=林龍也)
データ協力: やきうのおじさん(@yakiunoojisan)
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