数値から見る高卒新人投手たちの現在地。頭一つリードの宮城大弥、制球力が出色の及川、中田、井上
既に一軍でも2試合に登板している宮城大弥(オリックス)
プロ野球ドラフト会議まであと1週間。ちょうど1年前に指名を受けた選手たちも、プロ入りして1年が経ったことになる。本連載では高卒新人たちのファーム成績を追いかけ、その成長を分析する。第18回では、投手たちを見ていこう。
球威よりも打者を打ち取る能力が求められる西、浅田
10月18日終了時点で、ファームの規定投球回に到達している高卒新人投手はいない。しかし、これは特別嘆くようなことではない。なぜなら、最後にファームで高卒新人が規定投球回を投げたのは2017年の京山将弥(近江・横浜DeNA)が最後だからだ。
いかにファームといえど、近年の育成方針では高卒新人が規定投球回を投げることの方が稀なのだ。特に今シーズンは、コロナ禍の影響で特に調整も難しかったことだろう。そこで今回は、15回以上を投げている投手に絞って考察していく。下記グラフは彼らのWHIPを可視化したものだ。
このグラフを見ると、被安打/投球回が優れているグループ(左上)、与四球/投球回が優れているグループ(右)、そしてバランスの良いグループ(今回は宮城のみ)に分けて考えることができる。
まず、被安打、与四球とも良い数字をマークしているのが、オリックスの宮城大弥(興南)だ。一般的にWHIP1.2を切ればチームのエース級と言われるが、宮城はそれに近い1.3を記録。投球回でも高卒新人最多の53回を投げながら、投球内容でも良いことがわかる。既に一軍でも2試合11回を投げるなど、着実にステップアップしている。
続いて左上のグループを見ていこう。オリックスの前佑囲斗(津田学園)、阪神の西純矢(創志学園)、横浜DeNAの浅田将汰(有明)は、与四球/投球回はやや高いが、被安打/投球回で1.0未満となっている。前は別として、西、浅田は宮城に次ぐ投球回を投げているだけに、ファームで多くチャンスをもらうには、制球力よりも打者を打ち取る能力(球威)が重要視されるのかもしれない。
また、前に関しては投球回こそ少ないものの、被安打/投球回で宮城をも凌ぐ数字をマークするなど、今後の飛躍が期待できる要素を示している。
一方、右側のグループに位置する阪神の及川雅貴(横浜)、オリックスの中田惟斗(大阪桐蔭)、巨人の井上温大(前橋商)はいずれも与四球/投球回が0.35以下と、制球力が優れている。しかし被安打/投球回がいずれも1.2以上と、打者を打ち取るという部分で課題がありそうだ。
今回の15回以上には該当しないが、7月末から上半身のコンディション不良で実戦を離れていた東京ヤクルトの奥川恭伸(星稜)が、14日のイースタン・リーグ対日本ハム戦に先発した。結果は自己最長の3回を投げ1安打無失点、2奪三振、1四球で、最速は151キロをマーク。やはり投球内容では一歩抜けたものを披露してくれた。無理は禁物だが、長い回を投げられるようになったとき、どんな投球を見せてくれるのか楽しみでならない。
予定通り試合が消化されれば、ファームの公式戦も11月1日までの残り2週間ほどとなった。その後はファーム日本選手権も待ち受けるが、シーズン終盤での一軍デビューも気になるところ。いよいよ集大成の1ヵ月となる。
※成績は全て10月18日終了時点
(記事=林龍也)
データ協力: やきうのおじさん(@yakiunoojisan)
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