初出場果たすもセンバツ中止の無念、それでも前を見て進む加藤学園
悲願の甲子園初出場を果たした加藤学園(*写真は昨秋東海大会県岐阜商戦より)
今春のセンバツで、悲願の甲子園初出場を果たした静岡県の加藤学園。しかし、夢の舞台で試合をすることはなく、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で大会そのものが中止になってしまった。
「残念だけど仕方ないです。悔しいところもあるのは当然だと思うけれども、誰が悪いというものでもない。現状を受け入れて夏に向かって頑張るしかない。選手たちには考えて行動するように伝えました」
米山学監督は、大会中止が決まった際にはそんなコメントを残していた。そして、夏へ向けて切り替えていこうと、選手たちに声をかけていた。また、地元の人や後援会も含めて、周囲からの声かけも暖かく、そのことにも励まされたという。しかし、先の見えないコロナ自粛は、今となっては夏の大会にも影響を及ぼしそうな状況になってきた。
加藤学園としては5月18日の週あたりから、学校としては分散登校が始まりそうだという。それがどこまで続くのかわからないけれども、6月中旬あたりまでは続きそうな気配だ。そうした中で、野球部としては、「夏へ向けての切り替え」を意識してスタートしている。ただ、現実としては、まとまっての練習も出来ておらず、随時メールでやり取りしながら状況報告をしているというのが現状だ。曜日によっては、動画を送ってきて、それを米山監督がチェックするということもあるという。スイング本数やランニングの距離なども、あえて決めてはいないという。
「実際には、それでアドバイスするとか、そういうことはほとんど出来ないですよ。ただ、こうしてやっているという報告を受けているというところです。それに対して、私も頑張れということを伝えるくらいです。それよりも何よりも、元気そうだなということが一番で、そういう姿が見れればそれで安心出来ます」
そんな思いを語ってくれた。
加藤学園の場合は、何人か県外出身の寮生もいる。帰省した選手もいるが、緊急事態宣言の強化されている7都府県出身の寮生に関しては、親とも相談して沼津市の寮から出ない方が安全だろうという判断で留まっている。
「今はこういう状況でもあるので、一人ひとりへの声かけも難しくなってきています。自主練習を一人でやっていくというのも辛いと思います。『(夏の大会が)ないと思っても練習しておきなさい』と言うのもおかしなことですから、あくまで大会に備えての準備だというつもりでやっていこうということは言っています」
そんな複雑な心境も本音で話してくれた。
「これは、自分も含めてということにもなるのでしょうけれども、健康管理もしっかりとやっていかないといけません。それに、教育ということで言えば、野球がすべてではないということもあります。だから、こういう機に、いろいろ考えていくのもいいと思っています」
と、生徒たちの体調管理や心身のケアも気遣っている。
ただ、やはり頭を悩ますのは進路の問題だ。甲子園出場の原動力となったエースの肥沼 峻君をはじめ、加藤学園の場合は、大学野球などでやっていきたいという希望の選手も何人かいる。今は、受け入れ先の大学へも連れていくこともままならない状態。評価の実績ということでは、昨秋の大会しかないというのもなんとももどかしい。
「野球がやれるようになるのを待つしかないけれども、そのために準備をしておくことだけです」
これが今のところの出来ることだということである。
新入生に関しては、今季は米山監督自身が新入生クラスの副担任を持っているということもあって、入部予定の25人の顔合わせはしているという。新入部員の数も、例年よりやや多いのは、やはり一昨年あたりからの実績を上げているという要素もあるだろう。
春の甲子園での試合は出来なかったが、チームは沼津市から、沼津市の魅力を広くPRし知名度向上、話題づくりに貢献したということで「燦々ぬまづ大賞」を受賞した。沼津市は、いたるところから富士山を望むことが出来る風光明媚な立地にあるのだが、加藤学園野球部は、そんな沼津市で甲子園を目指して努力してきて燦々と輝いたということで評価されたのだった。
(記事:手束仁)
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