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【動画追加】鹿児島の独自大会は地区大会・決勝トーナメントの2段階方式で開催。現場からの声は?

2020.06.26

【動画追加】鹿児島の独自大会は地区大会・決勝トーナメントの2段階方式で開催。現場からの声は? | 高校野球ドットコム
枕崎のミーティングの様子

 鹿児島県高校野球連盟は6月5日、臨時の役員・常任理事会を開いた。中止となった第102回全国高校野球選手権鹿児島県大会の代替大会として、「2020鹿児島県夏季高校野球大会」は地区大会、決勝トーナメントの2段階方式で実施すると発表した。

 硬式に関しては鹿児島市、南薩、北薩、姶良・伊佐、大隅、熊毛、大島の各7地区で予選を実施。抽選は6月27日に開催され、大会は7月8日から大島地区を皮切りに開幕する。

 地区予選を勝ち上がった16チームで7月22―28日の7日間(2日間休養日)、鹿児島市の[stadium]平和リース[/stadium]、[stadium]鴨池市民[/stadium]、両球場で決勝トーナメントを実施する。各地区からのトーナメント出場校配分など詳細は後日発表する。

 新型コロナウイルス感染拡大防止策に万全を尽くすため、開閉会式は行わず原則無観客試合。ただし、保護者や控え部員の応援は認める。

 軟式に関しては7月17―20日(休養日1日)の4日間、鴨池市民球場でトーナメント戦を実施する。抽選会は硬式と同日に行う。

 県高野連では代替大会として様々な方式が検討された。通常の県大会同様に近いトーナメントを要望する声も多かったが、感染が完全な終息に至っていないこと、練習が不十分で熱中症対策などが万全でないことなどを考慮して、このような方式が採用された。

 中森俊朗理事長は「これから7月28日の決勝戦が終わるまで感染防止対策を徹底し、安心・安全に試合が終わるために全力を尽くしたい。その上で3年生がしっかりと高校野球に区切りをつけて次の目標に向かっていって欲しい」と話した。

「鴨池で終わらせてあげたかった」「安心・安全の大会運営」…夏季大会に寄せる複雑な想い

 代替大会が発表される6月5日はどこかの野球部をピックアップして3年生全員の夏に向けての想いに耳を傾けたいと思った。そこで選んだのが昨秋ベスト4の枕崎だった。

 ちょうど枕崎に向かう頃に代替大会の方式が発表された。地区大会と決勝トーナメントによる2段階方式。甲子園の中止が発表された頃は「地区大会ができればいいのではないか?」と予想していた中、決勝トーナメントまで開催されるというのはなかなか良いアイディアではないかと思った。

 関係者の言葉を聞くべく、まず鹿児島実の宮下正一監督に電話した。この代替大会を開催するために高野連とは別に宮下監督が会長を務める監督会が精力的に動いていたことを知っていたので、この方式で決まった感想を聞きたかった。

 「やると決まったことはありがたい」と話しながらも「正直不満です」と言う。監督会としては通常の県予選とほぼ同じかたちでの開催を強く主張していた。全チームの選手にアンケートも取り「99%の選手たちが鴨池で試合をしたいと答えた」(宮下監督)という。

 コロナ対策に対しても「各地区に分散して開催するよりも県立、市民、2球場で開催した方が防止対策にもなる」と主張する。鹿児島は離島を抱えている点が通常開催をためらう大きなネックになっていたが「離島のチームをトーナメント表の各ブロックにあらかじめ振り分けて、連泊連戦を避ける」アイディアまで提案していた。

 「甲子園がなくなった以上、3年生に鴨池で野球を終わらせてやりたい」

 宮下監督の一番の想いがここにあるのは十分に伝わった。


決勝戦が終わるまで、安心・安全な大会運営を

 続いて県高野連の中森俊朗理事長に電話した。各所の対応に追われていて一息ついたころだったようだが「いろいろあると思いますが、ひとまずは3年生のためにこういう大会を作れたことがよかったと思います」が第一声だった。

 高校球児の気持ちを汲んだ宮下監督を中心とした監督会の意向に沿えなかったことに対する申し訳なさは十分に感じながらも「コロナが完全に終息したわけではない」ことへの不安が拭い去れない以上は通常開催が困難であるというのが役員・理事会の判断だった。それ以上に心配なのは「練習不足、準備不足による熱中症」などへの対策が不十分であることも大きな懸念材料だった。

 「7月28日に決勝戦が終わるまで、安心・安全な大会運営ができるように全力を尽くしたい」

 中森理事長はあらゆる批判を受けるのも承知の上で、覚悟を決めているように思えた。

 通常開催を主張する監督会、運営する側の高野連、双方の気持ちが分かるだけに伝え手として何を発するべきか、大いに悩むところだった。

 ちょうど電話取材を終えて、グラウンドに戻った頃、枕崎の小薗健一監督がマウンドの付近に全部員を座らせてミーティングをしている頃だった。

 「マックスの力を出し切ってないじゃないか!」

 厳しい口調で部員たちに語り掛けていた。「これまでゲームがなかった分、ここが勝負を分けるという緊張感のある練習ができていない」と感じた。昨秋以降公式戦がなく、練習試合はおろか、練習さえも不十分だったことは分かる。しかし、どんな形であれ、頂点を目指す舞台が決まった以上は、全力を尽くしてそこに向かっていかなければならないのに、その気概が練習中の部員たちから伝わってこなかったことへの戒めだった。

 「地区大会だけで終わらせず、決勝トーナメントを作ったところが中森さんの愛情だったと思いますよ」

 代替大会への感想を小薗監督は話す。同時に「監督会が必死になって動いてくれたからこそ、決勝トーナメントが実現した」と感謝する。監督会の頑張りがなかったら、地区大会で終わっていた可能性が高かったのではないかと推察する。

 6月の鹿児島県議会開催にあたって三反園訓知事は高校野球の県大会に関して「5月29日に県高野連会長と地方大会の代替大会の開催について、意見交換した」と述べている。「これまで懸命に練習してきた生徒の思いに応え、大会が無事に終えられるよう感染症対策に要する経費など何らかの支援を行う」という。高体連の代替大会については言及がない中で、野球に関しては元高校球児の知事が直々に高野連会長と意見交換したという事実が重い。

 いずれにしても、様々な想いが交錯する中で、鹿児島の代替大会は地区大会、決勝トーナメント方式の「2020鹿児島県夏季高校野球大会」として開催することが決まった。枕崎の3年生17人全員にこの大会にかける意気込みを聞いた。後で本音の部分を聞けば「鴨池でやりたかった」気持ちは正直あったが「この舞台を作ってくれたことに感謝して全力を尽くしたい」と大半の3年生が語っていた。

 「『野球だけが』(特別扱い)ではなく『野球から』何かを変えていけるものを作っていきたい」

 監督会理事でもある鹿児島玉龍の谷口裕司監督は、この方式の決定がある前に話していた。どんなかたちであれ、真剣勝負の舞台が今示されたことで、この数カ月様々な不安を抱えながら日々を過ごした3年生たちが「高校野球」に区切りをつけられる大会にするために、まずは関係者一同が全力を尽くすことを期待する。

(記事=政 純一郎

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2020鹿児島県夏季高校野球大会

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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