愛知啓成と対戦する昨夏覇者・誉は気合十分。やるからにはどこにでも負けないつもりで
誉ナイン(写真提供=誉高校野球部)
2019年の夏の甲子園は、誉の主将・林山侑樹の選手宣誓で幕を開けた。春夏通じて初めての甲子園だった誉は、開幕戦で八戸学院光星と対戦をして0対9で敗れたが、誉の歴史に残る1日になったことは間違いない。
その後、誉は当時スタメンで甲子園を経験した手塚陸斗などを中心に再スタートを切ったが、県大会の初戦で名古屋国際の前に敗れる。早い段階で春に向けて準備を続けてきたが、新型コロナウイルスの影響で活動は止まった。
誉では3月から休校措置を取り始め、次第に全体で練習できる時間は減っていった。そして4月に発令された緊急事態宣言を受けて、下宿生を原則実家に帰省させることにした。
個人で練習する時間が増えたが、「夏の甲子園に向けて動けるように、身体を作ってこいよ」ということを指揮官の矢幡真也監督は選手たちへ伝えた。具体的な練習メニューや報告をするといった態勢は作らなかったが、矢幡監督がしたことは、モチベーションを上げることだ。
「ダルビッシュ有さんとか、錦織圭さんなど有名なアスリートの名言をチームのLINEで流してあげて、モチベーションを上げながら選手たちが自発的に練習できるようになればと思って流していました」
こうして個人で過ごす時間が続いた誉だったが、5月22日からようやく活動を再開することが出来た。その時には甲子園の中止、そして愛知県独自の大会が開催されることが決まった状況だったが、甲子園の中止や独自大会の開催について矢幡監督はこのように語った。
「21日に下宿生も帰ってきましたので、3年生を集めてミーティングをしました。『こんな状況だけど、昨年度の甲子園に出場して引き継いできたモノがあると思う』と言うことを話しました。
その上で独自大会の開催が発表されていましたので、『最後の大会に臨む姿を後輩たちに見せて、誉の野球を受け継いでほしい』と言うことを伝えました」
甲子園の中止でモチベーションを落とす選手もいたが、「最後までしっかりやったことで、初めて次のステップに行けるんじゃないのか」と選手たちにメッセージを送った。矢幡監督は高校野球を完全燃焼させてから選手たちには次へ進んでほしかったのだ。
すると選手間でも「最後の大会に向かっていこう」と声を掛け合い、最後までやり抜く決意が固まり、5月22日から誉は再始動した。最初はキャッチボールなどの基本的なところから確認し、現在は練習試合を組みながら実戦経験を積んでいる。「思っていた以上に自粛期間中もしっかり練習してくれていたおかげで、すぐに実戦に入れました」とスムーズに練習に入れたとのこと。ただ感染防止のために人数を制限したり、手洗いなどには細心の注意を払って練習を重ねている。
独自大会は7月に開催されるが、選手たちの熱量が凄まじいことを矢幡監督は感じ取っている。
「2年生対3年生の紅白戦をやったことがありますが、その時の選手たちの一生懸命な姿勢を見て、『甲子園がないけど、こんなに一生懸命取り組んでくれるのか』と思ってうるっときました。だからこそ、『甲子園をかけた戦いをしてみたかった』と思いは沸いてきました」
先輩とは背中で後輩見せることのできる人だ、と矢幡監督は常に選手たちに伝えていた。それを3年生は体現していると言うことだ。残された時間は少ないが、誉は独自大会の優勝に向かって練習を重ねる。
「やるからにはどこにも負けるつもりはないです。あと、勝つことを目指す過程で、創意工夫や継続力。ブレない心というのが野球を通じて学べると思っています。だから最後まで上手くなろうと思ってやっていこうと伝えています」
そして初戦の相手は強豪・愛知啓成と決まった誉。強力な相手を上回る戦いができるか注目だ。
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