「ひたむきに泥臭く」46年ぶりに甲子園へ行く磐城(福島)の交流試合への想い
写真は昨秋の東北大会の磐城ナイン
6月10日、日本高等学校野球連盟(日本高野連)は、第92回選抜出場予定だった出場32校に対し、2020年甲子園高校野球交流試合を甲子園で開催することを発表した。
各校では喜びの声が聞かれ、21世紀として46年ぶりの甲子園出場を叶えた磐城を率いる渡辺純監督は、「権利を持っていながら出来ないと思っていたところから、出来るようになって選手たちには『良かったな』とまずは声をかけました」と当日の様子を振り返る。
この春から2017年夏に準優勝経験のあるいわき光洋から磐城へ異動し、同時に監督に就任。赴任して2週間程度は選手たちともに練習をしてきてチームのことを把握してきたが、4月17日から活動を自粛。
5月の長期休みが明けてから週に1回を目安に選手たちは学校に登校。しかし練習はできず、本格的には6月8日からやっと活動を再開し始めた。
磐城で、同地区のいわき光洋にいた渡辺監督は、選手の顔や名前はわかっていたものの、選手たちの性格までは把握できていなかった。そこで、5月は選手たちが登校してきた際に面談をするなど、コミュニケーションを綿密に取ってきた。
「練習ができない分、選手たちと話し合うことしかできませんでしたが、選手が帰る前に時間を作って少し話ができました。ですので、休校をしていた時期に比べたらコミュニケーションはきっちりできたと思います」
その中で5月20日に甲子園の中止が決まり、その後、選手たちと再会したが、呆然とした様子だった。
なかなか現実を受け止めれない状況が続いたが、渡辺監督は「代替大会を信じてやっていこう」と話をしつつも、選手たちに時間を与えることにした。
「まだ練習ができない環境でしたので、『今後のことをゆっくり考えて欲しい』ということを伝えました。3年生は受験がありますし、元々、3月までいた顧問の先生や校長先生を甲子園に連れていくことを目標していたので、その甲子園が無くなるのはゴールが無くなったことになるんです。その中でどこを目標にやるのかということを考える時間を作ろうと思ったんです」
モチベーションの作り方など、乗り越えるべき課題を時間をかけて解決させようと、渡辺監督なりに選手たちへ配慮した。そうした中で交流試合が出来るというのは、磐城にとって目標が復活したこととなり、大きな意味があった。「常に一生懸命やってくれていますが、甲子園で出来ると言うことに、選手たちの表情を見ていても喜んでいるのがわかります」と語る。
福島県では7月18日から独自の大会が開催される。そして8月10日以降のいずれかで交流試合が予定される。これからが最後の調整期間となる。
「当たり前の日常が当たり前ではないことがよくわかりました。勝つことにこだわりながら、野球のできる喜びや周囲への感謝を試合で体現できるよう、ひたむきに泥臭くプレーさせたい」と意気込みを語った。
磐城は有終の美を飾れるように、残りの期間を全力で駆け抜ける。
(記事=田中 裕毅)
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