西三河の新鋭・岡崎学園は守り勝つ野球で昨秋8強以上の成果を残す
左から山田優都、近藤翔亜
昨秋の日本一・中京大中京をはじめ、実力校がしのぎを削る「球国愛知」こと愛知県は7月4日から「夏季愛知県高等学校野球大会」が開幕する。
その大会に向けて調整を続けている昨秋ベスト8の岡崎学園は春以降にさらなる躍進を目指し、冬場の練習を過ごしていた。だが、今回の一件で学校は5月7日から分散登校が始まったが、練習は5月25日までできなかった。
チームを率いる田中信宏監督は選手たちに自粛期間の過ごし方を任せていた。これまで岡崎学園は全体練習に加えて、選手自身に考えて練習に取り組ませる時間をとっている。自粛期間になってもそのスタイルを継続してきた。
投げては140キロ近く、そして長打力もチームトップの二刀流・山田優都は、「日中にはキャッチボールを友人として、夜は走り込みをしました」と語れば、主将の近藤翔亜は、「ランニングや近くのグラウンドでキャッチボールやバッティング。家の方では筋トレや素振りなどを欠かさずやりました」と、限られたスペース、時間の中で日々身体を動かしてきた。
週に何度かに分けて田中監督は電話で選手たちとコミュニケーションをとるなど、事態の収束を待ったが、20日に甲子園の中止が決まった。「2年半目指してきたものがなくなり、ショックといいますか、言葉が出ませんでした」と近藤主将が語れば、「何も言葉にできないと言いますか、やる気が出ない感じでした」と山田も振り返る。
そんな中、22日に3年生が登校日だったことを利用して、田中監督はミーティングの時間を作った。
「切り替えることができない選手が多かったです。ですので、『自分が現役の時にこの状況になっていたらやる気が起きていないかもしれない。それくらい苦しい』と話はしました。
ただ、選手にしかわからないこともあると思うので、『時間をかけても良いから、今後どうするのか。話し合って考えよう』という話もしました」
後から聞くと、一部の選手からは「後輩たちに譲った方がいいのではないか」という声もあったそうだが、25日の時点で独自の大会が開催する方向で進むことが決まった。選手たちの中では、大会の開催は大きな意味があった。
「気持ちの切り替えといいますか、『もう一度力を入れてやっていこう』とチーム全体が一丸となって雰囲気は良くなりました」(近藤主将)
「全員でミーティングをして『大会で優勝しよう』とまとまることができたので、今はその目標に向かって頑張って練習ができています」(山田選手)
25日から短縮授業という形で再開したことに合わせて、部活動も1時間の時間制限を設けて再び始まった。田中監督は選手たちを見ていて、「少しずつですが、以前の状態に戻りつつあります」と調子が上向きになってきたことを語る。
「先輩たちの代からのスタイルを継承していますが、全員が気持ちを切らすことなく練習をやり切って、大会に入りたいです」と意気込みを語る近藤主将。
指揮官の田中監督は、「全員が楽しみです。選手それぞれに可能性を感じており、僕の方がワクワクしています」と夏が待ちきれないようだ。球国愛知の歴史に岡崎学園が名を刻めるか、注目だ。
記事=田中 裕毅
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