日本福祉大付は、ガチンコ勝負でメンバー決めして代替大会に挑む
日本福祉大付・松山海大選手
近年、愛知県の知多地区で著しく実績を上げてきている日本福祉大付。チームを指導している山本常夫監督はやや異色の経歴を有している。自身は近大付の出身でもあり、かつては関西地区で高校野球の審判員を22年間務めていた。その後は神村学園へ赴任して監督として春夏合わせて5回甲子園に導いている。審判員としても監督としても甲子園を経験しているのだ。
そんな山本監督が請われて、愛知県の日本福祉大付で指揮を執るようになって3年目。外様として愛知県に赴任してきたのだが、今回のコロナ騒動下の中で、甲子園を目指す夏の選手権大会が中止となったものの、独自の大会へ向けて愛知県高野連の対応の素早さには感謝と敬意を表している。
「愛知高野連は5月20日の選手権中止発表後、1時間足らずでメールが高野連理事長名で各顧問に届きました。独自の大会の準備を進めていること。そしてなにより『3年生部員へ大変なことになったが、どうぞ腐らず、残りは少ないが高校野球を精一杯ケガなくやり遂げてほしい』というメッセージがありました」
そのことに正直、「愛知県はありがたい県だと思った。涙がこぼれました」という思いで、すぐ部員たちにLINEで報告をしたという。
また、20日に甲子園の大会が中止という報道に関しては、高校野球の指導者という立場からは、「高校野球が大きく取り上げてもらえるスポーツである」ということに感謝している。しかし、その一方で一人の高校教員で3年生の担任という立場からは、他の高体連種目の生徒も多く預かっているということもあって、非常に複雑な思いもあったという。
それに、TVのニュース報道に関しても、(なぜ?)「九州は地域によっては普通に猛練習も再開しておりその映像と、甲子園中止決定を聞き泣く姿! 全国ほとんどが全く練習もできないさなかに流す必要のある映像なのかな」という驚きや違和感もあったようだ。
知多半島の先端に近い立地ということもあったが、チームとしての再始動は、愛知県の他の学校とほぼ、足並みは揃った形となった。学校そのものは、5月25日から分散登校が始まっていた。そして、6月1日からようやく3学年揃って練習再開することができるようになった。
練習再開に当たって、他校ではこの夏季大会には3年生だけで挑んで、1、2年生は新チームとして練習しているところもある。しかし、日本福祉大付としてはチームの方針として山本監督は、再開した初日にミーティングで「ウチはベストメンバーで挑む!」ということを伝えている。
大会中止が発表された日は、まだ休校期間中だったので、直接選手たちに話をすることは出来なかった。それでも、会って話せる日までに、多少時間的な余裕があったことで、「精神的には(選手たちも自分も)落ち着けたのではないか」という気持ちにはなっていたという。
活動期間も短くなり、正直3年生が可哀想と思う気持ちもったが、高校野球をやっていくということでの戦いはチームの中で競っていくことも大切だという考え方もある。現在のチーム構成としては、3年生が23人、2年生が34人。そこへ1年生が16人加わってきた。
5人のマネージャーと合わせて、総勢80人を超える人数となった。これは、知多地区では一番の大所帯ということになった。それだけに、その人数の中で、まずはベンチ入りを争っていきながら「ベンチを外れた悔しさ、入れた嬉しさと入れなかった仲間や上級生の思いを背負って戦うことの大切さを感じ取り、やり切ってこそ初めて高校野球だ! だから、ウチはまずは今までの夏の選手権の時と同じように、チーム内でベンチ入りを目指して競い合っていき、ベストメンバーで挑もう」
こうした山本監督の考え方を最初に伝えたという。もちろん、選手たちも、そのことに対して改めて、覚悟を決めて大会に挑んでいくという姿勢を持つことは出来たようだ。
3年生にとっては、残された時間はあまり多くはない。それでも、最後まで真剣に努力して、ベンチ入りを目指して戦いながら、最後の夏を迎えることになる。そのために、先週末から、成果を試していく練習試合の場も作られてきた。改めて「目標に向かって進んでいこう」そんな意気に包まれている。
(記事=手束 仁)
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