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2度の指名拒否経てプロ入りの長野久義、元近鉄戦士・坂口智隆ら84年世代ドラ1の現在地

2020.05.27

 野球の世界には「松坂世代」を始め、有力選手が集まった世代を「〇〇世代」と形容する流れがある。毎年12名のドラフト1位が生まれるので、平均すれば各世代に12名のドラ1がいることになるのだが、多い世代、少ない世代というのが出てくる。そこで世代別にドラフト1位を集計し、その現在地を見ていきたい。今回は高卒18年目、36歳を迎える84年世代だ。

現役6人中3人がヤクルトに集結

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長野久義(広島東洋カープ)

 84年世代でドラフト1位指名を受けたのは、高卒5人、高卒社会人1人、大卒7人、大卒社会人4人の計17人。彼らの主な通算成績は以下の通り。

<2002年ドラフト>

高井雄平(東北・ヤクルト) 2球団競合

投手 144試合 18勝19敗 1セーブ17ホールド 297.1回 265奪三振 防御率4.96

打者 925試合 66本塁打 377打点 38盗塁 打率.293

西岡剛大阪桐蔭・千葉ロッテ・ツインズ・阪神) 単独指名

NPB 1125試合 61本塁打 383打点 196盗塁 打率.288

MLB 71試合 0本塁打 2盗塁 20打点 打率.215

森岡良介明徳義塾・中日・東京ヤクルト) 単独指名

557試合 7本塁打 97打点 4盗塁 打率.241

尾崎匡哉報徳学園・日本ハム) 単独指名

25試合 0本塁打 1打点 0盗塁 打率.176

坂口智隆(神戸国際大付・大阪近鉄・オリックス・東京ヤクルト) 外れ1位

1382試合 29本塁打 380打点 81盗塁 打率.282

<2005年ドラフト>

吉見一起金光大阪・トヨタ自動車・中日) 希望入団枠

218試合 89勝54敗 11ホールド 1269.1回 835奪三振 防御率2.91

<2006年ドラフト>

田中大輔如水館・東洋大・中日・オリックス) 希望入団枠

58試合 1本塁打 3打点 打率.177

大隣憲司(京都学園・近畿大・福岡ソフトバンク・千葉ロッテ) 希望入団枠

141試合 52勝50敗 834.2回 650奪三振 防御率3.36

高市俊帝京・青山学院大・東京ヤクルト) 希望入団枠

15試合 0勝2敗 32.1回 21奪三振 防御率8.35

永井怜(東京農大二・東洋大・東北楽天) 希望入団枠

155試合 43勝43敗 2ホールド 789回 616奪三振 防御率3.65

金刃憲人市立尼崎・立命館・読売・東北楽天) 希望入団枠

216試合 17勝17敗 36ホールド 326.2回 215奪三振 防御率3.97

岸孝之名取北・東北学院大・西武・東北楽天) 希望入団枠

290試合 125勝84敗 1セーブ 1950回 1677奪三振 防御率3.02

宮本賢関西・早稲田大・北海道日本ハム) 希望入団枠

22試合 0勝0敗 1ホールド 23回 9奪三振 防御率3.91

<2008年ドラフト>

野本圭岡山南。駒澤大・日本通運・中日) 2球団競合

449試合 9本塁打 83打点 1盗塁 打率.224

藤原紘通長崎南山・福岡大・NTT西日本・東北楽天) 外れ1位・2球団競合

22試合 6勝8敗 1ホールド 101.2回 58奪三振 防御率5.22

<2009年ドラフト>

長野久義筑陽学園・日本大・Honda・読売・広島東洋) 単独指名

1281試合 142本塁打 520打点 93盗塁 打率.285

中澤雅人富山商・中央大・トヨタ自動車・東京ヤクルト) 外れ1位

174試合 12勝14敗 18ホールド 265.2回 177奪三振 防御率4.95

 高卒組からは個性的な選手が多く出ている。高井雄平(現・雄平)は投手として入団し18勝をマーク。8年目から野手に転向すると、925試合で858安打をマークし、1000安打も視野に入れる。抜群の身体能力は健在で、今季も主軸を打つとみられる。

 西岡剛はロッテ時代の2010年にシーズン200安打を達成し、翌年メジャーに移籍。試合中のケガなどもありメジャーでは71試合出場に終わったが、2013年に日本球界に復帰するとスタメンに定着。しかし阪神でも試合中にケガに見舞われるなど、故障に悩まされ続けた。2018年オフに自由契約となり、翌年からはBCリーグの栃木ゴールデンブレーブスでプレイ。今季はロッテのキャンプに練習補助員として参加するなど、NPB復帰を目指している。

 

 2011年には最多安打も獲得し、通算1408安打の坂口智隆。現役では残り2人となった元近鉄の選手だ(もう一人はヤクルトでもチームメイトの近藤一樹)。バファローズ最終年となった2015年には出場機会が激減したが、ヤクルト移籍後はレギュラーに定着して復活を果たした。昨季はケガのため22試合にとどまったが、今季は一塁のレギュラーとして期待される。森岡良介は中日では出場機会に恵まれなかったが、ヤクルトでは選手会長を務めるまでになり、2015年の優勝時にはビールかけの音頭を取った。2016年シーズンで引退し、今季からは内野守備走塁コーチに就任した。強打の内野手として報徳学園から日本ハム入りした尾崎匡哉だったが、プロ12年間で25試合出場に止まった。

 高卒社会人では吉見一起が中日入り。2009年に16勝、2011年に18勝を挙げて最多勝に輝くなど、通算89勝をマークしている。昨季は5試合で1勝に止まったが、今季は復活を遂げて二桁勝利を目指したい。

 大卒組からは好投手が多く生まれた。西武に入団した岸孝之は、ルーキーイヤーから4年連続二桁勝利を挙げるなど、13年間で125勝を積み上げている。今季も先発ローテーションの一角として、活躍が期待される。大隣憲司も入団2年目に11勝を挙げるなど、二度の二桁勝利をマークし、通算52勝。2018年シーズン限りで現役を引退し、ロッテのコーチを務めている。ルーキーイヤーから先発・中継ぎでフル回転した永井怜は、3年目、4年目に二桁勝利を挙げ、通算43勝。2年連続未勝利に終わった2015年オフに引退し、今季から楽天の育成コーチに就任した。

 金刃憲人も1年目から先発ローテーションに定着、7勝をマークした。3年目以降は中継ぎでの登板がメインになり、楽天移籍4年目の2016年には54試合で防御率2.38と好投を見せた。しかし故障の影響もあり、2017年オフに現役を引退。即戦力として期待された高市俊だったが、一軍ではなかなか安定した投球を披露できず、未勝利のまま2011年オフに自由契約となり、引退した。早稲田大時代、当時大学では珍しい二刀流として活躍を見せた宮本賢。プロ入り後は中継ぎで22試合に登板したが、未勝利のまま2012年に自由契約となった。

 大卒社会人からは4人がドラフト1位指名を受けた。1年目に64試合、2年目に118試合出場とレギュラー獲りが期待された野本圭だったが、平田良介大島洋平らが台頭する中レギュラーに定着することはできなかった。出場機会が激減するなか、2018年シーズン限りで現役を引退。ルーキーイヤーの藤原紘通は、開幕こそ二軍で迎えたが、シーズン中盤から一軍に昇格すると、8月に1安打無四球完封、打者27人で終わらせる準完全試合で初勝利を挙げた。この年5勝を挙げたが、以降は故障にも悩まされ、2年続けて登板なしに終わった2013年オフに現役を引退した。

 2度の指名拒否を経て、念願の巨人入りを果たした長野久義。1年目には新人王、2年目には首位打者、3年目には最多安打とチームの中心的存在へと成長。2019年には、FA移籍の丸佳浩の人的補償で広島へと移籍。自身初めて100試合に届かず、連続二桁本塁打も9年でストップしたが、今季はレギュラー獲りに期待がかかる。中澤雅人は、1年目に主に先発で7勝をマークしたが、以降は中継ぎ登板がメインとなっている。昨季は1試合登板に終わったが、今季は復活を果たし投手力に課題を抱えるチームの戦力になりたい。

 今季を現役で迎えたのは6人と、大分その数を減らしてきた84年世代のドラ1選手たちだが、その多くはチームの主力として活躍を続けている。まだまだ活躍を見せてくれそうな彼らのプレイを、今後も見守っていきたい。

記事:林龍也

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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