昨秋の神宮大会覇者・中京大中京は、6月1日から学校での練習再開予定
昨秋明治神宮大会で優勝し選手たちから胴上げされる高橋源一郎監督(中京大中京)
今春のセンバツ代表校で、優勝候補の一角にも挙げられていながら、大会中止でその力を全国に示し切れなかった中京大中京。5月20日の日本高野連からの夏の大会中止が発表されたことを受けて、高橋源一郎監督は苦渋の思いで、その現実を選手たちに伝えることとなった。
学校としては、週末に出席番号によって奇数番と偶数番の生徒がそれぞれ分散登校という形になっていたので、21日と22日と分けて、クラス行事の後にグラウンドに集めて話をしたという。
「今回は、ここまで練習自粛していくことが続きながらも、それでも『夏を目指してやっていこう』と言ってきて、皆も夏を目指してやってきていただろうけれども、その通りにならなかったのは申し訳ない気持ちだ」
そんな思いを伝えたという。特に、3年生に対しては言葉を選びながら、6月1日の学校再開までに気持ちを整理しておくようにということを伝えた。
「久しぶりに、生徒たちの顔を見られたので少し安心したというところもありました。それに、愛知県の高校野球連盟の対応が非常に早く、代替大会を提案してくれましたから、そのことにもありがたい気持ちで感謝しています」
と、今の気持ちを語ってくれた。
学校としては、名古屋市の発令に合わせて6月1日まで休校ということになっている。そして、その日からは通常授業が再開されて、強化部としての指定を受けている野球部は陸上競技部、サッカー部、水泳部、フィギアスケートなどと共に練習再開をしていくことになっている。
ただ、その練習再開に際して、高橋監督は、やはり3年生たちの気持ちの浮き沈みを配慮している。チームとしては、昨秋の明治神宮大会で優勝を果たしたことで、自信を得たことで、印出太一主将らは「自分たちだけが掲げられる目標が、全国4冠だ」と定めた。その意識で、センバツと夏の甲子園、さらには国体優勝までやり切っていこうという大きな目標を掲げていた。また、それだけの力のあるチームでもあるという評価でもあった。
それだけに、今回の中止決定が残念だという思いは、より強いというのも正直なところであろう。それでも、注目のエース高橋宏斗君や印出君、中山礼都君らは、しっかりと次のステージを見据えているという。
「目標設定はしていってあげたいと思う。上(大学、プロなど)でやろうという意識の強い子は、次へ向けての意識はある程度は自分で作っていかれるかもしれません。だけど、まだ、進路そのものも決めきれていない子も多くいます。そういう子たちへの、配慮というか、そこはしっかりと話していかないといけません」
こんな状況なので、例年行われていた6月上旬の大府との、ベンチ入りから外れた3年生選手たちによる引退試合も中止となった。中旬に予定されていた県の招待試合での東海大相模との試合も中止となっている。
それでも代替大会が予定されていることについては、「場を与えてもらえるということで、そこへ向かって行かれる気持ちは作れるだろう」という思いである。
そして、今後再開されていく練習に関しては、ある程度はメニューは分かれるけれども、3学年で進めていきたいという方針だ。高橋監督は、常々「今ある環境の中でやっていくこと」を目標としている。だから、全国レベルの強豪校としては、必ずしも恵まれているとは言えない環境でも、「この環境の中でしっかりと練習して、頂点を目指していくことに意義がある」ということも伝えていた。
そんな思いで、今回の措置も受け止めている。
「3年生に関しては、やはり、高校野球の締めくくりの場ということで、しっかりと向き合わせていきながら進めていきたい」
そして、毎年6月は夏へ向けての強化月間ということで、質の高い相手との練習試合が多く組まれている。今年も、6月以降は大阪桐蔭、智弁和歌山、招待試合の東海大相模を含め、横浜、日大三、関西といった甲子園常連校との試合を多く予定していた。それらを「最後までやれるかどうかの可能性を残しながら」一つずつキャンセルしていくという方向で日程を再度作っていこうということのようだ。
いずれにしても、3年生の気持ちに寄り添いながら活動する、日本を代表する高校野球の名門校だ。その動向を見届けていきたいものである。
(文/手束仁)
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