最後まで高校球児としての自覚をもってやり切って欲しいと願う堀越の小田川監督
堀越(*写真は2019年秋季大会共栄学園戦より)
4月になって、再び休校要請が出て以降は6日と7日に、学校の屋上で少し、生徒たちと話をしただけというのは堀越を率いるベテランの小田川雅彦監督だ。小田川監督は、かつて修徳中で全国大会へ導くなど指導実績を挙げた。その後、系列の高校を預かるようになった際にもやや低迷気味だった伝統校を復活させて、2005(平成17)年春には甲子園にも導いている。その後には、しばらく高校野球の指導現場を外れていたが、2018(平成30)年春に12年のブランクを経て、堀越で現場復帰を果たしている。そんなベテラン監督としても、今回の新型コロナによる休校や練習自粛は初めてのことである。
3月28日以降は、まったく練習が出来ていないという状況だという。それでも、LINEメールで近況報告などを選手たちから受けていく中で、新たな発見もあったという。特に、マニュアルを与えて細かく日々のことを報告しなさいというものではなく、「どんな風に過ごしたのか、報告はしなさい」という大雑把な指示だった。それだけに、選手それぞれが、個々の理解で報告してくることによって、見えてきたこともあったという。
「この子は、こんな感じ方をするんだ。こんな鋭い感性があったんだ。こんな思いを抱えていたんだという発見も多くありました」
そう言って、選手たちの新たな側面を見出すことが出来たことも多かったと喜んでいた。
具体的には、こんな報告もあったという。
ある選手は、グラウンドが使えるということで、自分の出身中学で一人練習をしていた。すると、そこへ一人の中学3年生が来て、黙々と一人で練習を始め出した。その中学生は、既に大会は中止が決まってしまい、中学生の部活動としての場はなくなってしまっていた。そんな後輩の姿を見て、「もし、大会が出来るとしたら、どんな形でも試合が出来るということになれば、こうした後輩たちに『是非、堀越で野球をやりたい、堀越へ行きたい』と思わせる、そう思えるような試合をしなくてはいけないと思った。そのためにも、今を大事にしていかなくてはいけない」というようなことを伝えてきたという。
「普段は、そんなに自己主張してきたりする子じゃないんですけれどもね、そんな風に考えることが出来るんだ、と思って感心しました。そういう思いは大事にしていかなくてはいけないです」
小田川監督自身も、改めて心が洗われたという。
実は、小田川監督は修徳監督時代の最後には、部内不祥事もあって部として1年間の対外試合禁止処分を味わっている。選手たちは、戦わずして大会に敗れることを味合わされたのだ。しかし、その代の3年生たちは、「たとえ大会に出られなくても、(東東京大会の)開会式まではしっかりと練習して、高校野球をやり切ったという気持ちで練習していきたい」ということを話し合っていたという。
やがて、そんな選手たちの姿勢も評価されて、修徳は異例の処分短縮となった。こうして、何とか最終の夏の大会にだけは間に合って試合をすることが出来た、ということがあった。
「高校野球にとって大事なことは、試合に勝つことではなくて、その野球部員として練習を重ねていくことなんだ、という思い。選手たちが、そう言う気持ちになっていかれたことが嬉しかった」
小田川監督は、その当時のことも思い出したという。そして、今の堀越の選手たちにも、その話も伝えたという。
「目先のことで落ち込むのではなくて、可能性があれば、その可能性に向かっていこう。日常の当たり前だったことから、世界が変わっていっている中で、それでも高校球児だという自覚は失わないでいよう。たとえ、どんな結果になったとしても、ここまでやってよかったと思えるような終わり方をして行こう」
そんなことを呼び掛けているという。
新入生の27人に関しては、幸いにして練習着などの用具は、何とか手渡されているという。そのことで、新入生も高校野球へ向かう意識は作れていると信じている。
そして、小田川監督自身は週に1回は高尾にあるグラウンドへ向かい、草むしりなどの作業をしながら、来るべき再開の日を待っている状態だという。
(取材・手束 仁)
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