一日の大事さを理解して積み重ねながら、千歳丘(東京)は新ユニフォームお披露目の日を待つ
写真は2018年3月の試合から
学校として、野球部を強化しているとか否かという、そういうことは関係なく、今現在、社会で起きている現象はまったく同じだ。2月末からは部活動として何も出来ていないというのは、ほとんどの学校が味わっている現実なのである。
ごく普通の一般的な公立高校という位置付けの東京都立千歳丘の野球部もまったく同じである。赴任して3年目を迎えた秋本則彦監督は、主将とはLINEメールで「このトレーニングをやったらいいんじゃないか」というような動画は送っているというが、それ以外のことはあまりやれていないという。
ただ、トレーニングに関しては、冬の強化トレーニングでの強化ポイントなどを、改めてトレーナーからのメールなどでも配信しているという状態だ。
ただこの春、都立千歳丘としては秋本監督が以前からこだわっていた、練習試合用のセカンドユニフォームを新調したところだ。高校野球としてはいささか思い切った、社会人野球のような印象も与えるようなブルーを基調としたものでかなりインパクトの強いものとなっている。しかし、残念ながら今のところはそれを披露する場がない。
選手たちも、その新ユニフォームで強豪校などとも試合をしていきたいという思いがあったであろう。それだけに、そのことも残念でならないようだ。さらには、グラウンドも少しずつ改修工事が出来ていて、秋本監督の母校で甲子園出場実績もある米子東を招いての試合も来春には予定しているのだという。
そういう意味では、今後の中では、秋本監督が、考えて予定していたことがそれぞれ、今後どうなっていくのかということは、正直わからないというところもあるだろう。
それでも、指導者として伝えなくてはいけないこと、高校生たちに今のこの現実をどう受け止めていくのかということを大人として伝える責任を感じている。だから、言葉の一つひとつも慎重に選んでいかなくてはいけない。その中で、何をどのように訴えていくのか、それは指導者としての苦悩でもある。
「1日1日が長いとは思うけれども、その1日をどう過ごしていくのか、ということになると思う。各自で、やり切ったと思える1日の積み重ねがあれば、必ず再びグラウンドに立てる日が来るんだ」
そんなことも伝えているという。
そして、YouTubeなどで気になった選手のフォームなどは送って、それを参考にしていこうというアドバイスも行っている。先日も広島カープの鈴木誠也選手(二松学舎出身)の打撃フォームを送って、このフルスイングを参考にしようというようなことも伝えていたという。こうしたことで、技術的な面だけではなく、メンタル的にも、野球へのモチベーションを維持させていってあげるという効果にもなっているのではないだろうか。
メールなどで呼びかけていく言葉としては、
「弱者としては、この力をつけるのは今がチャンスなんだ」
というようなことも伝えていると言う。つまり、今こそ個人練習が出来るのだから、そこで自分自身を高めていけば、再開出来たときに自信を持って挑むことが出来るということへの示唆でもあるのだ。
「大会があるかないかということに関しては、現実問題としてはどうしようもないことだとは思う。だけど、それをどう伝えていくのかということは自分の言葉でしっかりと伝えていかなくてはいけないと思っている。『野球ノート』も書くように指示しているので、その中で一日一日の大事さを理解していきながら、先を見つめていってほしい」
そんな思いは、現場を預かる多くの指導者、教員たちの素直な気持ちであろう。
(取材=手束 仁)
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