メッセージ動画で繋ぐ心のリレー。全員が一丸となって、萩商工は難局を乗り越える
写真は2019年の6月から
野球界だけではなく、様々な業界でSNSなどを活用してメッセージ動画をリレーする取り組みが多くなってきた。スポーツ界であれば競技の垣根を超えたリレーにニュース番組でも取り上げられることがしばしばある。これに近い取り組みをして選手たちのモチベーションを維持しているのが、山口県の萩商工高校だ。
昨春の県大会でベスト4に入り存在感を示した萩商工は、3月は活動を自粛し、4月1日~4月14日までの2週間は2時間以内の活動ができたものの、4月15日から活動を再び自粛している。
当初は5月7日から再開予定だったが5月24日に延長している。ただ、先日の緊急事態宣言の延長によって、24日に再開できるも怪しい状況だ。チームをまとめる石橋知治監督に電話取材で心境を聞いても、「選手たちがどんなことに不安を感じているのか。そのことに対しての不安があります」と選手たちのモチベーションを懸念していた。
これだけ長期的に練習ができない。制限のある中で生活を続ける中でモチベーションを維持することは難しい。萩商工をはじめ、多くの学校にお話を聞いてきても口をそろえて出てくる共通の課題だ。それを克服、もしくは緩和するためにLINEをはじめとするSNSを活用するチームが多いが、萩商工もその中の1つ。しかし取り組み方は一味違う、その理由は冒頭でも説明したメッセージリレーだ。
5月24日までの休校延長が決まった4月28日から始まった取り組み。石橋監督から始まったリレーは現在も進んでおり、1分から1分半を目安に動画を撮影して全体へ共有。最低限のルールだけを設けたが、トレーニングの様子やおすすめの動画の紹介。
なかには歌で勇気づける選手や、中学校のときに野球部ではなかったが高校から野球部に入部した理由を語る選手。さらに手作りの料理を紹介する選手もいるなど、個性の溢れるモノになっている。
「指導者から選手にメッセージを送ったり、電話をしたりという取り組みをしている学校はよく聞きますが、私一人にできることは限られていますし、私の力はわずかなものだと思っています。では何ができるかと考えた時に、指導者を含めてチーム全員で不安な気持ちを共有したり、励ましあったりすることで前向きな気持ちになれればと思いました。
選手だけでなく、OBの協力を得て、メッセージ動画を撮って送ってもらったりもしています。グループLINE内では私もコーチも選手と同じ一人のチームメイトです。『全員で乗り切ろう』という思いで、気持ちが落ちることがないように取り組んでいます」
この取り組みが練習再開をした時には必ず活きてくるはずだが、石橋監督は練習メニューに関しては細かく提示していない。それは選手たちを信じたうえで健康第一に過ごしてほしいという願いがあるからだ。
「ノルマを作ってしまうと無理にでも外に出て練習をすると思うんです。けど、今は健康第一。周りに気を遣って、やれることだけをやって規則正しく過ごしてほしいと思います。純粋で人に優しく、野球好きな選手たちなので、そこは信用しています」
まだまだ先の見えない日々が続くが、萩商工はもう一度グラウンドでボールを追いかけられる日が来ることを信じて、今もメッセージ動画のリレーで心を繋いでいく。
(取材=田中 裕毅)
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