現実から目をそらずに。見えない敵に石巻工(宮城)は困惑しつつも、明るい未来を信じて
写真は2019年6月から
大型連休に入ったが、新型コロナウイルスの影響で練習はもちろん遠征や練習試合もできない日々が続く高校野球界。夏の大会開催も不安視される声も飛び交う中、再開を信じて球児たちはできる練習を続けている。宮城県にある石巻工も夏の大会開催を信じて自主練習をするチームの1つだ。
2012年には選抜に出場した石巻工。昨秋は東部予選を勝ち抜いて県大会に見事出場。初戦で仙台商に敗れたが、春先以降に弾みをつけることができた。冬場も春の大会での躍進を目指して練習をしてきたが、3月2日に政府から出た休校要請を受けて活動自粛。
対外試合もできないまま毎日が過ぎていったが、3月26日から練習が再開。手洗いやうがい、そして消毒などを徹底して練習をしてきたが、4月3日に再び活動自粛して現在に至る。
「1度目の自粛が明けた時は動きが重そうだったので、『走っておけよ』と話をしましたが長期間になるとは…」
電話取材でお話を聞かせてもらった利根川直弥監督は驚きを隠せない。現在はトレーナーからの提案で週2、3日ほどのペースでZoomを活用して参加できる生徒がトレーニングやストレッチをする様子を仕事の合間でチェック。最後に選手たちとコミュニケーションをとるなどして自粛期間を過ごしているが、選手たちの気持ちを心配している。
「5月になるので、夏の大会までは2ヶ月前になります。もしかすると『夏の大会ができないんじゃないか』と考えだす子もいると思うのですが、どうか気持ちは切らさずに最後の大会があることを信じて練習に打ち込めるように励ますことがメインになっています」
ただ利根川監督の中では難しさを感じている。石巻近辺ではまだ感染者が出ておらず、健康な人が多いのが現状。一見すると野球ができる状況だが、見えない敵の前に活動ができないところに戸惑っている選手もいるはず。そんな歯がゆさを抱えた選手たちに掛けるベストな言葉は何なのか。利根川監督はそこに難しさを感じているのだ。
それでも選手たちには現実から目をそらさないように指導をしている。
「辛いことですが世界中でこうなっているので、現実で起きていることに直視して未来のために考えて行動をしよう。高校卒業後の進路のことなど考えるとかですね。そして活動再開した時は野球に集中してほしいと思っています」
最後は、「勝ち負けももちろんですが、少しだけでも野球をやらせてあげたいです」と話して電話は終わった。利根川監督だけではなく、それは全国の先生方が考えていることだ。見えない敵との戦いはいつ終わるか目途は立たないが、今は夏の大会があることを信じて練習を続けるしかない。
記事:田中 裕毅
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