監督がグラウンド整備をして、復帰を待つ強豪・千葉敬愛。再開時の不安は焦りによる怪我
千葉敬愛高校
業務で出校することになった時には、一人でトラクターでグラウンドの整備をしているというのは千葉敬愛の山崎祐司監督だ。
学校としては2月25日に試験の関係で練習が休止期間になった後、休校要請となりそのまま3月は野球部としては何もできないまま過ぎていってしまったという。そして、4月になっても休校が続き、さらには緊急事態宣言が発出されたことで、山崎監督は「これは長期戦になるな」と感じた。だから、すぐにメンタルトレーニングメニューなどを含めて、保護者会のLINEに練習メニューの写メを送信するなどの手配をした。動画としては、トレーナーから、いわゆる‟マエケン体操”のような動きがわかるものを送ってもらうなどということも加えた。
また、学習課題としての英単語をマスターすることや、日々の生活では皿洗いや掃除など家の手伝いなどもしていこうということも伝えている。
ただ、ランニングメニューに関しては、5キロとか10キロとか指定することはしないようにしている。というのも、やはり選手たちの住む地域によってそれぞれの事情もあるということも配慮して「こちらからは押し付けることは出来ない」と考えている。私学でもあり、比較的広い範囲から生徒が通学してきているということもあり、そうしたことも念頭に置いておかないとはいけないのだという。
「仮に、大会をやれるということになったとして、6月から始まって分けて登校するなどということになるとしたら、そこから、どれだけいいパフォーマンスを出していかれるのかということを考えている。気持ちばかりが先走って、ケガをしてしまってもいけません。だから、むしろその準備としての意識と身体作りというように捉えています」
夏の大会そのものがどうなるのかわからないという厳しい状況の中である。もう一つの心配としては選手たちの進路の問題もある。
「上のステージでも野球続けていたいという子も、もちろんいます。そういう子たちにとっては、非常に厳しい状況です。車でもそうでしょうけれども、エンジン自体は小さくなっているのに、車体(気持ち)だけが大きくなっていきすぎてしまうと『思い切ってやれ!』ということも、安易に声を掛けられないところもあります」
と、再開されたとしても、その後のことにも頭を悩ませている。
「大会が出来るとなったら、選手たちをどれだけ楽しませてあげられるのか…。そのことに尽きると思います」
と、今の思いを語ってくれた。
底辺まで落ちていってしまった気持ちを、どうやっても一度作り直してあげられるのか…。いつ、収束して練習自粛が解けて、平常の状況になっていくのかということが見えない。それでも、再開された時にはしっかりとして気持ちで向かわせていってあげたいというのは、ほとんどの高校野球指導者の思いであろう。
「指導者として、こっちが不安な様子とかを感じさせてはいけないと思っています。今は、(選手たちと)会って話ができません。こういう時に、LINEメールだけでいいのかということも思ってしまいます。やはり、顔を見て話したいですよ」
そんな思いも語ってくれた。
「グラウンドも、選手も生き物です。今は、グラウンドとしか話ができませんので、やれる時はグラウンド整備をしています(苦笑)。なんだか、グラウンド整備職人みたいになってきました」
そんなことも電話越しに話してくれた山崎監督。自分自身としては、昨秋に指導方針などで少し保護者会などとの意見の違いもあったという。それだけに、「いろんなことを冷静に考えるいい機会にもなった」というとらえ方もしていた。
記事:手束 仁
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