東播磨は親への恩返し、そして歴史を繋ぐべく独自の大会へ挑む
東播磨の練習の模様 ※提供＝東播磨野球部
高校球児の憧れの地・甲子園のお膝元である兵庫県で上位進出図る東播磨。加古川北で2度甲子園に導いた手腕を持つ、福村順一監督がチームを率いるが、今回の事態を受けて4月中旬から1か月間の活動自粛を余儀なくされた。この期間中はLINEやZoom、さらにはYoutubeなどあらゆる最新ITを活用して選手たちに練習メニューを伝えてきた。
「緊急事態宣言を受けて活動が止まりましたが、長引くことが考えられたので、トレーニングを中心に動画配信をしました。ただ前回の自粛の時と違うのは、1年生がいることです。1年生に基本を伝えるためにも、トレーニングだけではなくプレーの基本も配信しました」
コーチとともに福村監督自らが手本となってプレーをするときもあれば、時には3年生が実践することで1年生と3年生の間でも関わりを作るきっかけづくりもしてきた。また、試合感覚を少しでも養うべく、状況に応じて求められるプレーを選手たちに質問して考えさせた。
座学に近い形式になるが、1年生は話を聞いて勉強をする。2、3年生は理解したうえで、どんなプレーが出来なければいけないのか。5月の長期連休明けからは、個人練習主体に切り替えることで、座学で気づいた、やるべき練習に割く時間を増やした。
そして18日から分散登校で学校が再開したが、夏の甲子園は20日に中止となった。福村監督は21日に登校してきた3年生を集め、ミーティングを開いた。
「選手たちには『気持ちの整理をしておきなさい』と話を前日していました。それでも悔しいですし、無念だと思うんです。私自身もどんな言葉をかければいいのか難しかったです。しかし選手たちは覚悟ができていて、比較的切り替えが速かったです」
福村監督は4月の高校総体中止を受けて、甲子園もどうなるか、早くから懸念していた。また、選手と保護者も同じように不安な気持ちのまま懸命に練習を続けていることを気にかけた福村監督は、保護者の協力も借りて、メッセージ動画を作った。
その動画を通じて、甲子園が無くなってもやってきたことは嘘にはならない。中止になっても次に繋がることを伝えつつ、中止になったとしても頑張ってやることを伝えていたからこそ、選手たちの中で準備はできていたのだ。
東播磨の練習の模様 ※提供＝東播磨野球部
そして選手たちに今後について、こんな話をした。
「『中止になったのは間違いないし、こんなにつらいことはない』と話をしたうえで、『ここまでやってきたことは嘘ではないし、甲子園という大きな目標が無くなってしまったので、引退を選択しても構わない。その代わり、勉強を頑張ってほしい』と話をさせてもらいました」
東播磨は進学校でもあるため、今後を気にする選手はなかにはいる。だから勉強に専念するのではあれば引退をしても構わないが、それでも継続するのであれば全力でやり切る。そして最低でも最後は全員でユニフォームを着て練習をして引退する。中途半端にせず、どちらかはっきりさせるように伝えたのだ。そこには福村監督なりに3年生の役目があると考えているからだ。
「今回のことで、新チームのスタートがもしかしたら遅れる可能性があるんです。だから中途半端に3年生が練習をしてしまうと、下級生に失礼なんです。また野球に対して全力で取り組むから学べることがあるので」
そうして独自の大会に対しても、どのように戦うか。東播磨では真剣に話し合いを進めたうえで、現在活動をしている。
「チームによっては代替大会をお祭りみたいな感じでやるところもあると思うんですが、真剣勝負をやりたいと思っています。大会の開催に感謝の気持ちを選手たちも持っていますが、『今まで通り実力でメンバーを選んでほしい』と言っておりました。チームでは甲子園を目指すことを目標にやってきた中で、3年生だけではなく、2年生も同じく甲子園を目指すチャンスを1回失っています。2年生のためにも、3年生が最後まで全力でやり続けないといけないんです」
3年生もそれをわかったうえで、今まで通り実力重視でのメンバー選考を願った。それが保護者への恩返し、下級生への示しになるとわかっていたからだ。兵庫県では独自の大会を開催することとなったが、その大会でどんな姿を東播磨は見せてくれるのか。6月から平日2日、土日どちらか1日の週3日で、90分間と制限の中で練習を続けていく。
（取材＝田中 裕毅）
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