野村克也氏の「ID野球」は高校野球界にも大きな影響を与える
左から田中善則、黒坂洋介、相馬幸樹監督
11日、野村克也氏の逝去が発表され、プロ野球界では別れを悲しむ声が多く聞かれる。
野村氏はプロ野球界だけではなく、社会人野球界の発展にも尽力されている。2001年末に阪神の監督を辞任し、2002年10月から社会人野球のシダックスの監督兼GMに就任。これまで野村チルドレンという言葉があるように、野村氏のID野球の薫陶を受けて、活躍する指導者が多いが、シダックス時代に指導を受けて活躍する高校野球指導者がいる。
その1人が中央学院の相馬幸樹監督だ。野村監督の野球学はもちろんだが、何よりも考えない選手に対しては厳しい姿勢を見せ、クビにすることもあった。
「社会人野球の経験から分かったのは、取り組みが甘い選手は結果を出すことはできないということ、そして、容赦なく『上がり』が宣告される世界だということです。僕が2年目のときに野村 克也さんが監督になりまして。野村さんの就任直後に10人ぐらいはクビになりましたから。こういう現実を目の当たりにしていて、なんとなくやっていてはダメだと、より痛感したんですよね」
野村氏の影響を受けて、相馬監督も中央学院では選手に考えて野球をすることの大事さを説いている。また指導者のスタッフを多くするなど、社会人野球に近い組織体制にした結果、2018年には春夏連続で甲子園出場を達成した。
また昌平の黒坂洋介監督もシダックス時代の教え子だ。
「ピンチの場面で気持ちで負けるなという声がよく飛び交いますが、気持ちも大切。でもそれはナンセンスで、『豊富な知識がピンチを救う』これが一番だと現役時代から思っていました。知識がないやつに配球やポジショニングを考えて野球は出来ません」
この教えはもちろん野村氏から受け継いだものだ。昌平の練習を見れば、選手がそれぞれ声をかけあって、カウント、状況を確認して、次のプレーは何があるのかを想定する声も聞かれる。次のプレーについて考える姿勢は脈々と受け継がれている。2018年夏は北埼玉大会でベスト8、2019年は3期連続でベスト8。今年も甲子園を狙える強豪校として注目される。
そして、昭和第一学園の田中善則監督は野村氏の後にシダックスの監督に就任しており、指導者としてもろにID野球の影響を受けた方だ。昭和第一学園は野球部の専用グラウンドがなく、左翼は70メートル弱で左中間の膨らみはないが中堅は120メートル、右翼線は96メートルという変則的な環境で、都大会でも健闘を見せ、選手の力量を見てもシートノック、打撃、投手のレベルを見てもレベルの高さを実感させる。今後も躍進に期待がかかるだろう。
野村氏は数多くの著書を出し、それに影響を受けた野球人、野球ファンは多い。野村氏の教え子は指導者として活躍する人が多く出ている。これからも野村野球は令和の時代になって受け継がれていくことだろう。
(文=河嶋 宗一)
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