投手の肩や肘をいかに守るか!東京都高野連の指導者研修会で専門医が講演
岩間徹氏の講義
今日の高校球界で最大の関心事は、球数制限の導入である。ただ1週間で500球という球数ばかりがクローズアップされがちだが、重要なことは、投手の肩や肘をいかに守るかということだ。
12月7日に行われた東京都高校野球連盟の指導者研修会では、肩や肘の専門家である2人の整形外科医を招いて、講演を行った。
まず登壇したのは、潤生会岩間整形外科理事長の岩間徹氏。岩間氏は松井稼頭央、和田一浩といったトップ選手の主治医の経験がり、神奈川県の高校野球で18年にわたりメディカルサポートをしてきた。
岩間氏がまず強調したのは、手術で完璧に治すことはできない。だからこそ、予防が重要であるこということだ。
球速125キロで85キロの重りをぶら下げたのと同じけん引力が加わるというから、肘の負担がいかに大きいか分かる。肘の悪化、いわゆる野球肘がひどくなると、体全体のバランスにも影響し、日常生活にも支障がでるため、放置することはできない。そこでまず始めたのが、神奈川県の高校野球のメディカルサポートであった。ここでは、アイシングやストレッチの他、投手の試合後のチェックや相談を行っている。そうした取り組みの結果、肩・肘に症状が出る人の割合、とりわけ重傷者は劇的に減少したという。
今では対象を少年野球まで広げ、指導者の関心も高まっているという。現場と医療が一体となって取り組むことが重要だと岩間氏は説いた。
舟崎裕記教授の講義
次に登壇した東京慈恵会医科大学整形外科教授の舟崎裕記氏は、肩の障害を中心に講演を行った。まず肩の特徴として、骨と骨がつながっておらず、脱臼を起こしやすいということ。それから肩には、肩甲骨も含めるということだ。
投球の際の踏み出し、肩の回転、リリースという一連の動作で、全身として不自然な動きになっていないかも重要になる。リリースの際にはオーバー、アンダーなどフォームに関係なく、両肩の延長線上に肘があることがポイントになる。
肩甲骨のストレッチやインナーマッスルのトレーニングについても説明があった。ちなみにチューブを使ったインナーマッスルのトレーニングでは、チューブがあまり強くないことが重要だという。
舟崎氏もやはり、現場と医療で情報を共有することの重要さを説いている。
来年から実施される球数制限。1週間で500球という数字に科学的な根拠があるわけではない。しかし指導者が投手の肩や肘の保護に意識を高めることに意義がある。しばらくは試行錯誤が続くだろうが、医療と指導者、そして選手がしっかり情報を共有して、よりよい方向にもっていってほしいものだ。
(記事=大島裕史)
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