マムシのようにしつこい強力打線・天理はいかにして作り上げたのか?
大会新記録となる3本塁打を放った河西陽路
明治神宮大会準決勝で敗れたが、天理打線は強烈な印象を残した。
近畿大会4試合で8本塁打、明治神宮大会で2試合で5本塁打と計6試合で12本塁打と圧巻の打撃を見せてくれた。それも全国的に見れば、投手力が高い履正社、大阪桐蔭、仙台育英、中京大中京など強豪相手に残した数字だけにその価値は高い。
天理はそのパワーだけではなく、掴まれたらなかなか離さないマムシのようなしつこさがある。
そんな天理打線を築き上げたのが、元プロ野球選手の中村良二監督だ。天理出身の中村監督は1986年にドラフト2位で近鉄に入団。通算41試合出場した。2015年から監督に就任し、2017年の甲子園では強打を武器にベスト4まで勝ち進んだ。
そんな中村監督の指導は、基本的に「思い切り振る」「強く振る」などシンプルな方針かつ、実際に実演しながらの教えが中心だ。
この神宮大会では、大会新記録となる3本塁打を放った7番・河西陽路や、近畿大会決勝戦から3試合連続弾を放った 3番・ 瀬千皓も、思い切り振ることを大事にしている。
この表現は当たり前のことのように言われるが、実際に天理の打者を見ると、打撃に迷いがない。結果を気にせず思い切り振れているのが結果として出ている。
では、技術的にアプローチしていることは何か。それについては仙台育英戦で3打点の活躍を見せてくれたセカンドの6番・田中輝希が詳しく解説してくれた。
「トップの位置、軸足と前足の重心の割合など打撃フォームの部分まで細かくしてくれます。最初は言葉で説明してくれますが、監督さんはティーで打って実演してくださいますので、非常にわかりやすいです」
実際に天理の打者たちの動きを見ると合理的。スクエアスタンスで構え、グリップの位置は高すぎず、低すぎず、ゼロポジションを意識した構えで、オーバーなアクションを取ることなく、スイングに入っていく。そのため構え遅れがないので、速球投手にも対応ができるのだ。
また量の中に質を求めてきた。朝練習、練習後の自主練習のスイング数は400本。その中で質を大事にして、高度な打撃を築き上げた。
神宮大会では4強に終わったが、来年も全国の高校野球ファンを驚かせる強打を発揮できるか、注目だ。