「琉球トルネード」島袋や広陵・有原 2010年甲子園の主役たちの現在地
高校時代の島袋洋奨(興南)
10月1日からNPBは「第1次戦力外通告」がスタート。興南出身の島袋洋奨の戦力外通告の一報を聞き、さらに野球人生に区切りをつけるのではという報道も出ている。今回、島袋が優勝投手となった2010年の甲子園を振り返って、当時、活躍していた選手たちの今を振り返りたい。
島袋は興南のエースとして、春夏連続甲子園優勝に貢献。「琉球トルネード」と評された投球フォームから繰り出す145キロ前後の速球と落差抜群のフォーク、ツーシームのコンビネーションが魅力だった。その後、プロの世界では苦しんだが、あの時の甲子園の快投は未だに印象に残っている人も多いだろう。
そして甲子園決勝で投げあった一二三慎太(東海大相模)は3年生以降、投球フォームが固まらず、サイドスローに転向。それでも140キロ後半の速球を投げる一二三のポテンシャルの高さはずば抜けていた。プロ入り後、肩の故障に苦しみ、野手に転向。思うような活躍ができずに阪神を退団したのは本当に惜しい限りだった。
またプロ入りはしなかったが、成田を甲子園ベスト4に導いた中川諒(成田)も、今でも千葉県民、若い高校野球ファンから根強い人気を誇る好投手だった。なんといっても初戦で優勝候補に挙げられた智辯和歌山に完投勝利。右スリークォーター気味から繰り出す140キロ前半の伸びのある速球で次々と三振を奪った姿は印象的だった。
卒業後はJX-ENEOSに入社するも、思うような活躍ができず、硬式野球部を退部。軟式のJXTGエネルギー・本社の野球班でプレーし、元気な姿をファンの前に見せている。
広島広陵から完封勝利を挙げた聖光学院・歳内宏明は構想外となった一方で、歳内と投げ合った有原航平は北海道日本ハムのエースへ成長を遂げた。
有原と同様にプロの第一線では、南陽工のエース・岩本輝がオリックスで奮闘を続けている。
また渋い活躍を見せているのが前橋商の野口亮太。後藤駿太(オリックス)とともに甲子園に出場した野口は宇和島東戦で完封勝利。ストレートのスピードは130キロ前半ながら、多彩な球種を投げて抑える高校生トップクラスの技巧派左腕だった野口はあれから9年。鷺宮製作所のエースとして、今年の都市対抗出場に導く快投をみせた。
予選のNTT東日本との代表決定戦では、好投を見せ、最優秀選手賞を受賞。都市対抗のHonda鈴鹿戦でも1失点完投勝利を収め、社会人野球の第一線で活躍中だ。高校野球はスピードのある投手が脚光を浴びやすいが、彼のようなテクニックの長けた投手が長く活躍を見せているのは今の高校生にとってもお手本になるはずだ。
今、振り返ってもキャラクター性抜群の2010年夏甲子園出場の投手たち。今後も彼らの活躍を祈念したい。