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共通点はノーガード戦法?今年の西武・山賊打線と2001年近鉄のいてまえ打線

2019.09.26

 9月24日、12安打12得点の猛攻を見せた埼玉西武ライオンズが、2年連続となるパ・リーグ制覇を決めた。山賊打線の名の通り、打って打って打ちまくっての優勝だ。そんな今年の西武の成績を見ていて感じたことがある。

「優勝したときの近鉄に似ているのではないか」

 そんな疑問を解き明かすべく、当時の近鉄バファローズと今年の西武を見比べてみた。

中村、ローズ、磯部の最強クリンナップ

共通点はノーガード戦法?今年の西武・山賊打線と2001年近鉄のいてまえ打線 | 高校野球ドットコム
山川穂高(埼玉西武ライオンズ)

 2001年の近鉄は「いてまえ打線」の異名の通り、近年の西武同様打って打って打ちまくるチームだった。1番・大村直之に始まり、3番・中村紀洋、4番・タフィ・ローズ、5番・礒部公一に加え、吉岡雄二川口憲史北川博敏らを擁する打線はまさに驚異的だった。

 今年の西武も、秋山翔吾が先陣を切り、源田壮亮がチャンスを広げ、森友哉中村剛也山川穂高外崎修汰ら中軸が走者を還すという攻撃が非常に強力だ。

 ここで両チーム主力打者の打撃成績と、チーム成績を記載し、比較していきこう。

▼2001年近鉄主力打者の打撃成績

大村直之 打率.271 16本 53打点 5盗塁

水口栄二 打率.290 3本 30打点 1盗塁 38犠打

中村紀洋 打率.320 46本 132打点 3盗塁

ローズ  打率.327 55本 131打点 9盗塁

礒部公一 打率.320 17本 95打点 7盗塁

吉岡雄二 打率.290 18本 65打点 2盗塁

川口憲史 打率.316 21本 72打点 0盗塁 ※規定打席未到達

▼2019年西武主力打者の打撃成績

秋山翔吾 打率.305 20本 62打点 12盗塁

源田壮亮 打率.274 2本 41打点 30盗塁 25犠打

森友哉  打率.329 23本 105打点 3盗塁

中村剛也 打率.286 30本 123打点 2盗塁 

外崎修汰 打率.273 26本 90打点 22盗塁

山川穂高 打率.257 43本 120打点 1盗塁

▼チーム成績

近鉄 得点770 失点745 211本 35盗塁 打率.280 防御率4.98(140試合)

西武 得点755 失点688 173本 134盗塁 打率.266 防御率4.33(142試合終了時点)

 両チームとも、長打もある1番打者が出塁し、2番がチャンスを広げ、強力クリンナップで得点し、6,7番でもう一押しするという、ある意味理想的な攻撃ができていることが読み取れるが、その破壊力が半端ではない。得点はともに750点以上と、1試合平均5点以上の計算だ。

 本塁打数では近鉄が200本を超すのに対し、西武が173本。今年の西武打線は5人が20本塁打を放ったことが話題となったが、近鉄打線は6人が15本超え、4人が20本超え、さらに中村が46本、ローズが当時の日本記録に並ぶ55本と、圧倒的だ。

 ローズが本塁打王、中村紀が打点王を獲得した近鉄に対し、西武は山川の本塁打王が濃厚、打点王は中村剛、山川の争い、さらには森が初の首位打者を視界にとらえている。

 盗塁数では西武が100近く上回っている。金子侑司の41盗塁を筆頭に、源田が30盗塁、外崎が22盗塁、木村文紀が16盗塁、秋山が12盗塁と走りまくっている。近鉄のトップがローズの9盗塁だったことを考えると大きな違いだ。

 本塁打数だけで長打力を語ることはできないのと同様、盗塁数だけで機動力を語ることはできないが、西武は長打力に加え、機動力で圧倒的な得点力を生み出していると言えるだろう。

[page_break: 西武は規定投球回到達者ゼロの可能性濃厚]

西武は規定投球回到達者ゼロの可能性濃厚

 ここまではその攻撃力の比較をしてきたが、投手陣でも共通点がある。防御率が高いことは数字を見ればわかるが、規定投球回到達者が少ない(もしくはゼロ)ということだ。

 近鉄で到達したのは前川勝彦ただ一人。しかも140.2回とギリギリでの到達だった(当時の規定投球回は140回)。防御率はなんと5.89だ。西武で規定投球回に到達する可能性が残されているのは今井達也だけだが、現時点で134.1回と、最終戦に中4日で登板し8.2回以上を投げなければ到達しない。松本航の予告先発が発表されたことからも、実現のハードルは高いと言えるだろう。

 にもかかわらず両チームとも二桁勝利投手が二人ずついるのだから驚きである(近鉄:前川12勝、バーグマン10勝、西武:ニール12勝、高橋光成10勝)。

 加えて、驚異的なペースでフル回転している中継投手が一人ずついる。西武は平井克典が81試合に投げ82.1回と、2試合に1回ではきかないペースで登板している。そして近鉄では岡本晃が61試合に投げ102.1回と、こちらは登板数もさることながら1登板につき2回近く投げているのだ。

 当時は今ほど登板数や投球回数について叫ばれることはなかったが、現代の野球からすると考えづらい起用法だったと言える。

 両チームとも、点は取られるが派手に打って勝つという、いわばノーガード戦法とも言える野球でパ・リーグの頂点に立ったのだ。近鉄は、北川の代打逆転サヨナラ満塁優勝決定ホームランが飛び出るなど、とにかく派手。その気持ち良いくらいの戦いぶりに、当時の野球ファンも熱狂したものだった。

 

 近鉄はこの年の日本シリーズで、セ・リーグ覇者のヤクルトと対戦。自慢のいてまえ打線がなかなか機能せず、1勝4敗で日本一を逃した。
西武はこれからクライマックスシリーズを戦うため、日本シリーズ進出はまだ決まっていないが、そこへの挑戦権は手に入れた。昨年の悔し涙を糧に、ポストシーズンでも山賊たちが打点を荒稼ぎし、クライマックスシリーズ勝利、そして念願の日本一はなるだろうか。

記事:林龍也

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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