150キロを投げられなくなっても勝利に導く寺原隼人
先日、U-18高校日本代表の1次候補たちが合宿を行った。そんななか、選抜高校野球大会で話題を呼んだ星稜高校の奥川恭伸や横浜高校の及川雅貴以上に注目を集めた存在がいる。大船渡高校の佐々木朗希である。
合宿内で行われた紅白戦では2回を投げ6者連続三振。日本代表候補の猛者相手に圧巻の投球を披露した。それだけではない。公式記録ではないがスカウトのスピードガンで163キロを計測したという。
163キロを計測した佐々木朗希(大船渡)
大谷翔平(エンゼルス)も花巻東高校時代は160キロが最速だった。それを3キロも更新したことになる。今秋のドラフト1位候補は甲子園に出場せずとも、大きな話題となったのである。
戦力外から2年ぶりの勝利
球速は選手を判断する上で、ひとつの基準になることは疑いようのない事実である。だが、高校野球に限らずとも、野球においては球速が速ければ必ずしも抑えられるわけではない。
また、高校時代に球速で沸かせた投手がプロ入りを果たし、10年以上の時を経て違うスタイルに変化している例もある。
ヤクルトの寺原隼人である。
寺原は日南学園高校時代に出場した高校野球選手権大会において158キロをマークし、一躍注目を浴びる存在となった。2001年のドラフトでは4球団強豪の末、ダイエー(現・ソフトバンク)に入団。1年目から6勝を挙げる活躍を見せた。その後、横浜(現・DeNA)、オリックス、ソフトバンクと渡り歩き通算71勝をマークしている。
しかし、昨シーズンオフにソフトバンクを戦力外となり、今シーズンからはヤクルトへ移籍。4月11日の試合では、6回途中2失点の内容で2年ぶりの白星をマーク。
この日の最速は146キロだったが、ストレートの殆どは140キロ前半。150キロを超えるようなストレートを投げる姿はない。
コントロールに苦しむ場面もあり、決して手放しで褒めることのできる内容ではなかったかもしれない。それでもスライダーやカーブ、シュートといった変化球を駆使して必死にマウンドを守ったのである。
剛速球を投げることができる投手も、やがて球速は落ちる時が来る。そのときにスタイルを変化させることで対応していくお手本のような投球だった。
誰もが目を見張るストレートを投げることができなくなってもマウンドで結果を残す。そんな投手がひとりでも増えてほしい。
文=勝田聡