東海大相模出身の技巧派サイドが大学準硬式で躍動 甲子園交流試合では伝令役だった投手に根付く門馬氏の教え
稲野辺元太(東海大)
東の横綱とも称される高校野球界の名門・東海大相模。2022年の夏の神奈川大会は、第2シードから甲子園を目指すが、毎年注目される強豪である。
卒業生はNPB、大学と各ステージで活躍しているが、大学準硬式の世界にも東海大相模を卒業した選手が活躍していた。
稲野辺 元太投手。2年生ながら東海大の主力投手として活躍。3月に開催された関東選手権でも、3試合に登板してベスト4入りに貢献した。
セットポジションから体を前傾させながら重心移動。そこからサイドスローの高さで鋭く右腕を振り抜く。直球は130キロほどだが、120キロ台のツーシームを効果的に使い、日本大の打線を苦しめた。
ツーシームが武器になったのは2年生の春から。それまでは直球、スライダーの2つだけで勝負する投手だったという。
東海大相模時代は120キロ前半だった直球は、トレーニングなどを通じて130キロまで上がり、チーム内でも地位を確立してきた。しかし、秋季リーグ戦の頃から2つだけでは抑えることが難しくなり、「ストレートと思ったところから動かして、バットの芯を外して打ち取りたい」という考えから先輩にツーシームを教わったという。キャッチボールなどで感覚をつかみ、21日の試合での活躍につなげた。
東海大相模時代は控え投手。名門チームでベンチ入りし、3年生夏の甲子園交流試合でも伝令としてマウンドに行くことはあったが、公式戦での登板機会は少なかった。
だからこそ稲野辺は学ぶこと、成長できたことが多かったと話すが、そこには恩師である門馬敬治氏の教えも関係していた。
「出ているメンバーに追いつくにはどうするか考えましたし、門馬先生からはいつもミーティングで『勝つためには、全員が何をするのか』ということを教わりました。今もチームが勝つためにどうすべきなのか。飛びぬけたものはないので、自分の力量の中で抑えることを考えて練習しています」
そうした考えの中で見出したのがツーシームだった。
門馬氏が伝えてきた縦じまのプライドは、大学準硬式の世界にも根付いていくことを、稲野辺の投球を見ていて、確信せずにはいられなかった。